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逆引き新寛永事典  
 
やみくもに銭譜を探しても、なかなか正合するものが見つからないときがあります。そのような方のために、基本的な特徴から銭種を探せるようにする・・・それがこのコーナーです。まずは対象になる寛永通寶をじっくり観察して下さい。なお、このコーナーでは新寛永通寶の銅銭だけを対象にしています。ご容赦下さい。

用意するもの : ものさし(できればノギス) 磁石 ルーペ
  

ステップ1 材質の違うもの鉄銭・金銀銭・錫・鉛銭ほかを除外します。 → Wグループ

  
まずは鉄銭を除外します。磁石がなくてもこれは簡単にできますが、不安のある方は磁石で判定するのも良いでしょう。なお、銅銭であっても磁性のあるものがあります。ただし、鉄銭に比べて非常に弱い磁性で、かろうじて磁石にすいつく程度だと思って下さい。

続いて金銀銭を除外しますが、これはほとんどないと思って良いでしょう。
新寛永系統で確実に存在しているのは四文銭では 
【背下点盛銀銭】 一文銭では 【常陸大田銭背久金銭・銀銭】 ぐらいでこれらは通用銭はいずれも鉄銭です。他にも見聞きした記憶はありますが、雑銭から出てきたら眉唾ものでしょう。あとは絵銭類に有名なものがありますが珍品です。【打印銭寛永】
金銀銭に見えるもののほとんどが 【鍍金銭・鍍銀銭】 の類で、中には分厚く金銀が塗られているものもあります。また、きれいな
【白銅銭】や、磨きの入ったものや薬品で洗われたものは金銀銭に見えるかもしれません。これらのものは見た目は変わっていてもあくまでも銅銭ですので除外しないで下さい。
古寛永は金銀銭がときおり市場に現れますが、この除外についてはステップ2で述べます。なお、古寛永の金銀銭の真贋判定は非常に難しいもので、少なくとも大金を払ってまで入手すべきものではありません。

錫・鉛などの材質のものは、
【錫母銭】か参考銭、贋造銭、あるいは【安南寛永】になります。錫・鉛のものは貴重なものである可能性がありますので専門家の意見を聞いてから判断して下さい。(ただし滅多にあるものではありません。)
その他の材質のものは近作おもちゃの類です。
鍍金銭 鍍銀銭 磨き銭 白銅銭 打印銀銭寛永
 

  
ステップ2 割れたり、欠けたり、歪んだり、極端に出来の悪いものを選別します。 
→ Xグループ
 
割れたり、欠けたり、歪んだり、磨り減ったものは基本的には商品価値がありません。無視しても良いのですが、超珍品の劣品や密鋳銭、廃棄母銭などが紛れ込んでいるかもしれませんのでとりあえずは除外して後回しにしておきます。

慣れない方には難しいかもしれませんが、
【状態が悪いもの】 と 【制作が悪いもの】 を見分けることが必要です。状態が悪い・・・とは、後天的に削られていたり、割れたり欠けたりしたもののことであり、珍品であっても価値がかなり落ちてしまいます。一方、制作が悪いものについては粗製濫造を行なった大きな銭座も多いのですが、密鋳銭なども含まれています。鋳だまり、鋳不足や粗いやすり目など制作的な欠陥が中心でそれがまた特徴になっている場合があります。
雨乞銭(あまごいせん)
降雨祈願の儀式銭。面背あるいは背のみに放射状に切り込みを入れるのが普通です。昔の風習を知る上での参考資料にはなりますが、価値的にはほとんどありません。
↓ 小さいもの、赤いもの、穴が広いもの、厚いもの、薄いものにチャンスあり!
密鋳銭
早く言えばニセガネです。
一文銅銭の密鋳については比較的大目に見られていたらしいのですが、それは採算がなかなかとれなかったからかもしれません。粗雑で銅質が異なるものが多いようです。密鋳銭についてはそこそこの価値が認められています。
面背逆製
これはエラー銭なのですが、とにかく見栄えがしません。面浅字狭穿、背深字広穿となっています。珍品の部類です。鋳型に母銭を置くときに表裏を間違えた結果の産物です。マニアは欲しがります。
錯笵銭(さくはんせん)
これも見栄えの悪いエラー銭です。内容によって価値は異なりますが、あまり高い評価はされないようです。左側が文字が二重になった【重文】、右側が【斜穿】です。面側の重文はかなり珍しいものです。 
安南寛永の類
見栄え、制作とも悪いのですが個人的には大好きです。ルール無視の私鋳銭です。比較的存在が少ない割りに評価はあまり高くありません。
鋳放銭(いばなしせん)
仕上げを手抜きしたもの。元文期以前のものは意外に見つからないものですが評価が低いのが残念。密鋳銭の可能性もあります。鋳バリと呼ばれる型からはみ出した部分があったり、湯道と呼ばれる溶銅の流れ込む部分が成形されずに残っていることなどで判別できます。

←丸屋銭の鋳放し銭。湯道が残っています。ちょっと珍しい品。
戯作銭
あるいは作銭。人為的な加工です。いたずらによるもの。この他によく見られるのが穴が丸く広げられている(コマや戸車の代用品に使用された)ものや輪が不自然に削られたもの(クサビやストッパーの代用品あるいは盗銅したもの)などです。価値はほとんどないものばかりです。
 

   
ステップ3 銭としての異常な体裁のものを選別します。 → Yグループ
 
ステップ3の延長ですが、ぺらぺらに薄いもの、異常に分厚いもの、異常に大きいもの、文字以外の絵柄が入っているものなど、お金としての基準からはずれるものはここで除外します。絵銭の類です。なかには超珍品がありますので楽しみに分類しておいて下さい。
 
薄っぺら 絵入り 分厚い・陰刻 違う文字入り(戯作) 大きい
 

ステップ4 背波のあるもの(四文銭)を選別します。 → Aグループ

  
ここからが本番です。背波のあるものを選り分けます。これは簡単です。
 
Aグループ
 
背21波のもの   背11波のもの
     青味がかった真鍮質。制作はまとまっている。 赤味が強い柔らかな材質。制作はやや粗雑。密鋳銭にも似たタイプがある。 輪側が丁寧に仕上げられており、銭が立つほど。穿内もやすり仕上げあり。銅色は黒味のある黄色。
Aグループは上記の4系統にほぼ99%は分類されます。残りの1%ほどが密鋳銭と鉄銭の母銭です。詳細分類は以下のリンクで調べましょう。
→ 四文銭の部 (銅四文銭)
 
→ 赤錆の館 (鉄四文銭)
 

  

ステップ5 古寛永・鉄銭母銭を除外します。 → Zグループ 

新寛永は【ハ貝寶】です。一方、古寛永は【ス貝寶】です。例外は鉄銭の母銭で、これは制作が非常に良いので古寛永に混じって除外されてもその後に拾い出すことは容易ですし、新寛永に混じってもその特異な形状は異彩を放つはずです。一部の鉄母銭については除外しきれませんが大勢に影響はありませんのでこのまま作業を進めます。

 
Zグループ
古寛永

寶足の左足が右足にくっつく。文字はぼてっと太いものが多く、比較的肉厚です。大きさは24㎜以上のものが多く、小さいものでも23㎜以上。ただし25㎜以上のものも少ない。
新寛永

寶足の左右が離れるのが原則。貝の爪もありません。文字は細く、肉薄のものも見られます。大きさにはばらつきが多く、23㎜以下のものはほとんどが新寛永です。
例外 鉄銭の母銭

鉄銭母にはス貝寶、ハ貝寶ともに存在します。左側がス貝寶の鉄銭母です。太字ですがかなりデザインされています。一般的な鉄一文銭の母銭の多くはハ貝寶になります。鉄銭母は非常に精緻で母銭らしい母銭が多いので慣れればすぐ判ります。
 

  

ステップ6 背文のあるものを選別します。 → Bグループ

背の郭上に文字のあるものを選びます。キズや鋳だまりの場合もあるので注意しましょう。これも簡単でしょう。

 
Bグループ
文 寛文期亀戸銭

佐 
佐渡銭の類

仙 
仙台石ノ巻銭の類

十 
元文期十万坪銭

小 
元文期小梅銭
一 元文期一ノ瀬銭

元 
寛保期高津銭

足 
寛保期足尾銭

長 
明和期長崎銭

川 
元文期小名木川銭

千 久 久二 ト 
→ 鉄銭の母銭
安南寛永が混じっている可能性があります。
 

 

ステップ7 輪に刻印のあるものを選別します。 → Cグループ

【輪に刻印が打たれていないか】慎重に観察して下さい。輪以外に刻印のあるものは上棟銭の類です。

 元文期十万坪銭の可能性が高い。丸に十字です。(刻印は2ヶ所まで)

 元文期平野新田銭の中字輪玉刻印母銭で超々珍品です。(刻印は1ヶ所)

 珍品、鉄銭の母銭です。(刻印は2ヶ所まで)

 珍品、鉄銭の母銭です。丸に一の文字です。(刻印は2ヶ所まで)

その他の刻印
概ね上棟刻印銭の類でしょう。刻印は様々で上、寿、祝、鳥居記号などの上棟慶事を表す文字から、姓名の一部刻んだもの、宗教的な模様や意味不明な記号など様々です。

 

  
ステップ8 以上の選別で選ばれなかったものの分類 → Dグループ
 
これからが山場。勘を研ぎ澄まして文字の特徴を探してください。
 
1.文字に特徴的な跳ねがある  
   
  永字フ画に先端跳ねがある 享保期難波銭 
    
  永字末尾に跳ねがある 元文期秋田銭
 
  寶前足(両足)に跳ねがある 元文期亀戸銭 
 
  寶後足に跳ねがある 元文期亀戸銭  元文期不知銭
2.マ頭通になる 不旧手の類
3.永字左右画の食い違いが著しい 元禄期荻原銭の類 
元文期十万坪銭
4.永柱が俯す 元禄期荻原銭の類
※この作業で荻原銭のほとんどが拾えてしまいます。俯すとは永柱が左側に傾くことです。  
5.含二水永 か 虎の尾寛 佐渡銭の類  元文期日光銭
元文期平野新田銭 元文期十万坪銭
※永頭が右側に飛び出すか、寛尾がうねりながら高く跳ね上がる書体です。
元文期以降の典型的な書体です。次のコーナーを参考に!
→ 類似銭の書体比較 
 
6.重揮通である 仙台石ノ巻銭
※通字のしんにょうがぐにょぐにょ曲がるものです。
   
7.通辵の折頭に鉤爪がある 仙台石ノ巻銭異書類 
  猿江銭類 文銭類似銭 
※通字のしんにょうの曲がり角に鉤爪状のもの(玉ではありません)が確認できます。猿江銭は小型になります。 
   
8.大きく、制作が良い 銭類似銭 正徳御用銭 幻足寛 

※外径24.8㎜以上が原則です。これは判りやすいのですが、後天的な大型銭も入ってしまう可能性もあります。火災による焼け伸びやたたき伸ばしは価値がありません。(ただしこれらはかなり痛んでいます。)

   
9.永字が扁平で長く尾をひく 元文期日光長字 
  元文期延尾永小字
   
10.ペン書体で進貝寶 明和期亀戸銭  
※寶貝が寶尓の縦画より進む。黄白色で磁性あるものが多い。  
   
11.千木永である 元文期藤沢・吉田島銭   
     
※ここからはいわゆる残り物の世界です。元文期と元禄期のものが多いのですが、慣れれば書風の違いが見えてきます。  
       
12.草点永で細字書体 元文期小梅手 元文期一ノ瀬銭 元文期加島銭 
元文期不知銭額輪類 
四ツ宝銭俯頭辵 
       
13.癖字・枯れ書体・白銅銭 四ツ宝銭類 元文期和歌山銭 元文期平野新田銭
※四ツ宝銭は制作が悪いもの、小さいものが多くなります。平野新田銭は黄白色で磁性のあるものが多くなります。癖字・・・という感覚は私だけのものかもしれません。あしからず・・・。  
四ツ宝銭類 和歌山銭 平野新田銭 
       
14.その他  元禄期荻原銭厚肉抱寛 元文期小梅手 四ツ宝銭跳永
元文期藤沢・吉田島銭縮字
 元文期一ノ瀬銭
※ここまで来て分からないものもあると思います。もう一度見落としがないか確認しましょう。 
 

 
ステップ9 WXYZグループの見直し、その後に銭籍の確認をじっくり行ないます。
 
以上は自分流の分類に【季刊 方泉處22号】の分類方法をアレンジしたものです。私流の分類は基本的には判りやすいものから選んでゆく・・・というごく当たり前の方法です。従って鉄銭 → 破損銭類 → 絵銭類 → 四文銭 → 古寛永 → 有背銭類 → 刻印銭類 →特徴のある銭貨からの選別 → 見直し という工程は、初心者の頃からの習慣になっています。実際に撰銭をするときには、目立つもの気になるものから選ぶでしょう?
 
 
時代別代表書体と制作比較
 
新寛永通寶銭はその鋳造時期によって大きく書体や制作が異なります。通貨価値は全国一律であるのが原則なので、同じ時代に鋳造された通貨の規格はほぼ同じになるはず・・・なのですが各地の銭座においてこの原則が必ずしも守られたわけではありません。そこで悪貨が良貨を駆逐する現象(あるいはその逆)によって銭の自然淘汰が行なわれたと思われます。鋳造期間の長かったと推定される仙台石ノ巻銭などについては、時代にあわせかなりの変化が見られます。
ここでは国内経済事情の変化による制作の変化と各時代を代表すると推定される銭貨書体について述べることにします。
 
亀戸銭
寛文期

新しい時代を担う貨幣をつくる・・・という意気込みが見られ、統一的な規格が素晴らしい。
書体は模範的で癖、欠点はほとんどありません。鋳造開始後は試行錯誤があったと思われますが、全寛永銭中で一番安定した制作です。そのため錯笵や白銅銭などの銅替わりは極めて珍しい存在です。
この銭貨が寛永通寶分類のための基本書体となります。外径は25㎜以上のものがほとんどです。
亀戸銭
正徳期(推定)

制作は安定していますが、材料の質の低下(白銅質化)が見られます。額輪にして銭の厚みを保持する一方で、銭文を低くしたり細くしたのは材料倹約のためだと思われます。額輪になったため銭面の磨きが充分に行なえず、そのため仕上げ作業工程も一部簡略化されたようです。書体については前銭をひきついでいます。外径はやはり25㎜以上のものが多いようです。これ以降、正徳、享保期を除き外径は25㎜以下のものが多く出現するようになります。

四ツ宝銭 荻原銭類 
元禄期(推定)

勘定奉行 荻原重秀の画策によって生まれた銭貨です。銭の流通量を増やすために、銭貨の質を落として材料を確保しています。書体に統一性がないのは、流通量の確保を最優先させ、短期間に全国一斉に新銭が鋳造された結果なのではないでしょうか。荻原重秀の真の狙いは銭改鋳による出目稼ぎではなく、金銀改鋳の前に銭相場を落とし、金銀改鋳利ざやを大きくすることにあったのでは・・・と考えています。外径、量目ともかなり小さくなり、書体は奔放で自己主張が強いものばかりで、元禄文化の自由性が伺えます。
不旧手類
元禄期~元文期(推定)

この銭貨は長期に渡って鋳造されたと推定されるものです。
マ頭通と俯柱永なら不旧手と思って下さい。個性は強いのですが書体はほぼワンパターンです。
四ツ宝銭  四ツ宝銭
宝永期(推定)

当初は銭の流通を図ることが改鋳の目的だったのですが、それが幕府に莫大な利益をもたらす事が判り改鋳を止めることができなくなった頃、富士山の爆発が生じます。操作インフレだった経済が予期せぬハイパーインフレに変わってしまった瞬間です。市場の銭供給を補うために悪貨が次々に鋳造され氾濫し、それがまたインフレを加速させる結果になったと思われます。小さく薄っぺらで粗悪な銭貨ですが書体に自己主張が見られます。
丸屋銭 佐渡銭  難波銭 
正徳期~享保(推定)

ハイパーインフレを抑えるに、幕府は良質の銭貨を投入することを決断しました。悪貨は良貨を駆逐する・・・というグレッシャムの法則があるように、生半可な投入量では良貨の退蔵が生じるだけです。したがってこのとき投入された新銭貨の量は半端なものではなかったと思われ、その結果、市場の混乱は治まったものと推定されます。外径は寛文期銭に匹敵します。書体も堂々としています。
仙台石ノ巻大型銭 仙台石ノ巻白銅銭 仙台石ノ巻末炉銭
仙台石ノ巻銭座:享保期~元文末期(推定)

この銭座はかなり大量の銭を鋳造したと推定されています。そのため同じ書体に黄銅質大型銭、通常銭、赤銅質銭、白銅銭、末炉銭が存在しています。書体はやや個性的で、再び個性の主張が表れはじめています。

※この後に鉄銭座となり、幕末までこの座は続きました。
和歌山銭 亀戸銭 秋田銭
元文初期(推定)

元文初期頃まではなんとか面目を保つ良貨が鋳造されいましたが、貨幣経済が発達するに従って今度は原材料の高騰が銭座を悩ましはじめます。銭を薄くしたり、外径を小さくしたりとかなり苦労したようです。書体は奔放で大きく自由度が高いものが多くなりますが、中央の亀戸銭の書体はこの後一大潮流を築くことになります。
十万坪銭 日光銭 佐渡銭
元文後期~寛保、明和期(推定)

原料の高騰に対し、、外径や量目の小さな貨幣鋳造が行なわれるようになってゆきます。この頃、各地で鉄銭の鋳造が始まっています。製造も粗悪化して、面背逆製などの錯笵銭もそのまま市場に出荷されています。銭径、書体とも縮小されており、かなり薄くなっています。
虎の尾寛、含二水永の書体が元文期以降代表する書体のひとつです。
小梅手 不知細字跳足寶 高津銭
元文後期~寛保期

元文期以降を代表するもうひとつの書体がこの小梅銭類などの細字書体です。(
細字で太細の少ない書体。)その他の銭貨類もこの書体に近いものがあります。元文後期銭は元禄、宝永期と同じように銭径が縮小しますが、書体に比較的まとまりが見られます。
十万坪白銅銭 佐渡磨輪銭 佐渡磨輪銭
元文後期~明和末期

元文期以降の鋳銭の傾向として、磨輪による軽量化と鉄分増量による白銅質化が挙げられます。元文期以降の白銅質銭は磁性が強いという特徴を有しています。民間による銅銭座経営の維持はほぼ限界に来ていたのではないでしょうか?右側の佐渡銭は薄っぺらでもはやルール無視の密鋳銭状態です。
 亀戸銭
明和初期
材料節約のため鉄と金属以外の成分も混ぜる試みが行なわれています。その結果、一時的ですが銭の直径の大きな銅銭が登場しています。ス穴が多くもろく割れやすいという欠点があり色も白っぽく、磁性を有しています。この時期の銭貨はこの材質が特徴で、書体は個性的でありながら左右の均整が取れています。この時代に限らず開炉直後は大きな銭を鋳造する傾向がどの銭座にもありました。
亀戸銭
明和後期

外径が大きかったのは一瞬で、銭は再び小さく、粗悪なものになって行きます。
加護山銭 高津銭写 藤沢・吉田島銭写
幕末~明治期(推定)密鋳銭

密鋳ですので、制作は悪いのですが、加護山銭は背景に銅山の存在があるので比較的たっぷりとした銭径があります。一文銭の銅密鋳銭はありそうでいてその実あまり見つかりません。それだけ一文銅銭の鋳造は割りに合わない仕事だったようです。
外国摸鋳銭の類
幕末頃? 安南寛永の類

海外ではさかんに鋳写しが行なわれていたようです。規格、制作にルールはないのですが、大きいものは少なく薄くて小さいものばかりです。金質は真鍮質のものが一番多く見られますが、鉛質、赤銅質のものも散見されます。
 

 
明和期四文銭
明和期四文銭

銀座の建議によって鋳造されたこの銭貨は、青黄色をしていたところから【青銭】という俗称があります。規格も比較的しっかりしていて、出来の悪いものはあまり見受けられません。背21波のものと11波のものがあり、21波は長尾寛肥字、長尾寛、短尾寛に分類できます。11波のものは【大字、正字、小字、離用通、大頭通、小頭通】の書体があり、小頭通を除く各書体が以降の時代に引き継がれています。
文政期四文銭
文政期四文銭

この銭貨は鉛の含有量が多く肌が赤いので
【赤銭】の別名を持っています。銅質柔らかく傷つきやすく、その上制作も粗雑で鋳だまりや錯笵なども多く美銭は少ないのですが、大型で超肉厚のものもときおり見つかります。
安政期四文銭 安政期真鍮銭
安政期四文銭

一見、明和期銭と同じように見えるのですが、輪側がロクロで研磨仕上げがされており、銭が立つほど角が立っています。穿内もきっちり仕上げられています。銅色は明和期に比べややくすんだ黄色で、変色して黒褐色になったものが多いのですが、稀に明るい色調のものがあり、真鍮銭と呼ばれ珍重されていますが、これは保存状態などによってかなり左右される上に中間的な色調のものも見受けられます。
文久様
文久様

安政期の真鍮銭にそっくりですがひとまわり小さく、また文字に加刀が見られます。この類は官鋳ではないと思われますがかなり力のある藩の銭座の出であると考えられています。掲示品は黄白色ですが、白銅色で砥石仕上げのものがあります。



← 寛字に加刀が著しい。(ただし、黄白色タイプを贋作とする考え方もあるようです。)
 
※以上、私の個人的見解+見聞きした知ったかぶり知識の論です。参考にはなるでしょうが引用する場合はご注意下さい。