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17.元文期 一ノ瀬銭の類 元文5年(1740年)紀伊国一ノ瀬 鋳造推定
新寛永銭の中に文字が細く中央の穿が大きく背に一の字のある一群があります。銭径が小さいので面文も小さいのですが、けっして萎縮した書体ではありません。元文期特有の書体として先に虎の尾寛、含二水永系の書体を見てきましたが、もう一方の代表書体がこの一ノ瀬銭や小梅銭に代表されるこの極細文字の書体です。これらの銭貨は総じて浅字のものばかりですが、その割りに型抜けが比較的良いものが多いようです。
一ノ瀬銭の特徴は穿がとりわけ大きくなることで、背郭もそれに合わせて大きくなり、背輪にくっつかんばかりの勢いです。

書体により高寛、低寛に分類され、それぞれに背一、無背があります。
【元文期 一ノ瀬銭】
高寛背一          【評価 稀】
背に一の字を置く有名銭。存在は非常に稀。
寛の前垂れが開き、寛足も高い特徴がある。

※なかなか入手できないでいましたが平成24年の銀座コインオークションでついに入手を果たしました。

高寛無背                 【評価 3】
穿が非常に大きいのが目立つ。寛の足の付け根が少し長く、郭から目画が離れる。寶冠前傾し、寶字も下がる。掲示品は無背であるが、背に一の文字のあるものは銅銭、鉄銭とも超珍品。銅色は黄褐色が多い。

→ 奇品館へのリンク

低寛背一                      【評価 4】
寛の字が座り込んだように郭にくっついている。寛の前足が屈曲せずにまっすぐ伸びるのは一ノ瀬、小梅とも共通の特徴である。背上部に一の字を置く。寶冠水平で寶字やや上に上がること、寛冠の前垂れがほぼ垂直になるのも高寛との相違点である。

低寛無背                       【評価 9】
上記の銭の無背銭。

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一ノ瀬銭の拡大図
高寛 低寛
詳細に調べれば全ての文字が違うが、やはり寛足の高さと、寛冠の前垂れに一番差がある。高寛は仰フ永でもある。
 
 
18.元文期 小梅銭・小梅手の類 元文2年(1737年)江戸葛飾郡本所小梅村 鋳造推定
文字が細いのは一ノ瀬銭と同じですが、背に小の文字を置くのが小梅銭です。背文のあるものは文字は確かに細いのですが、文字に勢いがあるように感じられます。穿についてはけっして狭くはないのですが、一ノ瀬銭に比べると小さく、背郭も小さくなっています。
この小梅銭に書体などが近似しているものをまとめて小梅手としています。昔からの分類なので尊重はしますが、銅質や制作がばらばらで同一銭座であるという確証は全くありません。

書体により小梅銭、小梅手に分類されますが、小梅手については別炉銭の集合体であるといっても問題ないと思います。
 
【元文期 小梅銭の類】【鉄銭あり →鉄銭の部】
狭穿背小                       【評価 9】
銅色、赤茶〜黒褐色。細字で文字の抜けが良く、制作は安定している。類品と比較して狭穿であるだけで、とりわけ狭穿が目立つわけではない。背小の字は第2画が跳ねる独特のもの。尓の小が頭の部分から離れ3つの点状になるのはほとんどのこの類(小梅手を含む)の共通である。
なお、狭穿背小には鉄銭はない。
広穿背小                  【評価 7】
前銭に比べると明らかに広穿である。寛尾は内跳ねで寶後足跳ねる。文字に太細がある。背小の字の第2画は跳ねない。
こちらには鉄銭がある。

広穿背狭小                 【評価 7】
小の右点が柱に近づき、縦画の跳ねがない。通字が巨大で寶字が降る。内跳ね寛で文字の太細も目立つ。鉄銭あり。

 
【元文期 小梅手の類】 
元文期小梅手(母銭)     【評価 大珍】

その存在数の少なさは、島屋文以上に珍しいと噂される。鉄銭もやや少ないのだが銅銭はとてつもなく珍しい。細字で寶足が跳ねることと永字の打ち込みの爪の大きい点が目立つ。通字もかなり昂がる。

(平成17年銀座コインオークションカタログより)

仰寛                          【評価 10】
寛字全体が仰ぎ、永頭、寶冠が俯す。永字の幅は狭くフ画が下から入る。銅質、制作とも小梅銭に近似する。背郭に大小がある。
鉄銭が稀に見つかり、なかなかの珍銭なのだが果たして正規銭であるかどうかは分からない。

仰寛背小郭                 【評価 9】
背郭が削られて小さくなっているもの。

俯永(母銭)           【評価 稀 通用銭は少】
薄肉小様で広穿。小梅銭に筆法や制作が似ているが、同炉である確証はない。永字幅広く永頭が急角度で俯す。珍銭の部類に属し、存在は稀である。掲示品は母銭である。以下は背郭が小さくなる銭が続き、同炉であると思われる。通用銅銭は紫褐色が多い。俯永縮字という超珍品が発見されている。
→ 俯永縮字

大永                         【評価 10】
永字のく画側の打ち込みが大きい・・・と、いうことだがどこといって特徴に欠けるおとなしくきれいな書体である。次掲の大サ寛とは通のしんにょうの頭の位置が違う。すなわちこちらのほうが用画の上側にしんにょうの頭が位置する。また、寶前足が輪から離れる。

大永大サ寛                【評価 9】
寛字のサ画が幅広く、ウ冠の後垂れに接している。また、永画のく画の打ち込みがさらに長い。通しんにょうは低く、用画の下に位置する。寶前足は輪に軽く接する。大永より銭径が大きいものが多い。

進冠小永                 【評価 10】
寛冠が進む。ほとんどの銭譜が進寛小永の名称を採用しているが小永は大永に比較してのことであり、呼称としては適切ではないと思う。通字が上がり、通頭が大きい。

仰永                   【評価 9】
寛字、永頭、永柱、フ画まで仰ぐ。以上が背小郭のグループ銭である。

広穿                   【評価 7】
銅質は黄褐色から黄白色、きっちりとした制作から見てもあきらかに別炉銭である。背広郭で書体が整い、文字大きく銭面からの立ち上がりも良い。たしかに鉄銭があってもおかしくない出来である。

狭永                          【評価 9】
これもどう見ても別炉銭である。書体的には次の加島銭に近似している。浅字で銅色は赤褐色のものが多い。尓の形状も他の小梅手と異なる。

密鋳銭 仰寛写赤銅薄肉
参考品として掲示したが、ざらざらした赤銅薄肉のもので、密鋳銭としてはかなりハイレベルな技術のものだと思う。赤銅色は火中変化によっても生じるため、密鋳銭の判断は内外径や銅質、制作などの総合的な判断が必要である。
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小梅手類の拡大図
仰寛 大永 大永大サ寛  仰永 
俯永 進冠小永  広穿 狭永 
 
  
19.元文期 加島銭の類 元文3年(1738年)摂津国西成郡上中島加島村 鋳造推定
古くは延享鳥取銭とされていたのですが、鉄銭とセットで加島銭として割り当てられている。文字は細く、浅字であるため状態の良いものが少ない。また、前掲の小梅手狭永とそっくりで、同じ銭座としても良いような気がしますが、銅質が若干異なります。
 
 
【元文期 加島銭の類】 
細字正冠                 【評価 10】
詳細は以下の比較説明を参照されたい。銅色は黒茶〜紫褐色。
細字斜冠                       【評価 10】
寛冠の右側の持ち上がりが目立つ。昂通、降寶でもある。詳細は下記説明を参照のこと。
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類似銭の書体比較
小梅手 狭永 加島銭 正冠 加島銭 斜冠
寛字が仰ぎやや高寛である。永フ画が上がり大きく、永字の幅が少し狭い。永柱の跳ねの方向がやや横向き。 通頭が大きく寛目が大きい。低寛になる。寛冠も幅が広い。  寛冠、寶冠ともわずかに前傾する。寛目、寶目とも小さく、高寛、短寶となる。
 
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