戻る      進む  
 
文久永寶の細道
美星倶楽部
赤錆の館(鉄銭の部)
天保銭の小部屋
浩泉丸編
新寛永通寶分類譜
古寛永基礎分類譜
     
はじめに・・・
文久永寶は中途半端な位置づけの穴銭です。文久・・・という立派な元号で名づけられ、公的通貨として大量に鋳造されながらもその流通期間は寛永通寶に比べてとても短く、歓迎された通貨であったとは言えない側面がありました。
文久永寶は文久3年(1863年)に金座、銀座の管轄で鋳造されています。この頃は天保銭全盛の頃で、回収した銅銭を天保銭にさかんに改鋳した結果、市場で流通する小額銭が圧倒的に不足する事態が生じていました。一方で幕府では将軍の上洛に備え資金を調達する必要に迫られていました。銅一文銭の鋳造は既に中止しており、代替品としての鉄銭を鋳造するにも鉄銭の相場が低迷する中では銑鉄の確保が難しく採算がとれなかったようです。そこで天保銭鋳造用に回収した銅一文銭から軽量の銅四文銭を大量鋳造して急場をしのぐことにしたようです。この計画は銅銭相場の高騰期を狙って市中に小額銭を投入することで経済を活性化させ、さらに将軍の上洛資金を稼ぎ出す・・・という一石二鳥の計画だったようです。一方で寛永の面文を用いなかったのは、寛永通寶という信用ブランドを傷つけて銭相場を荒らすことを避ける思惑が働いたのではないでしょうか。
書体は大きく分けて
 真文 草文 玉寶 の3種類ですが、古寛永の御蔵銭のように加刀変化が激しく細分類をすると際限がありません。私も一応は集めてはいたのですが、真剣味がないせいかそれほどは保有していません。一方で文久銭の文献は少なく、市場にも売り物があまりないのが実情で、ほとんどの方が真文・草文・玉寶の基本銭3種を手に入れるだけで収集をやめてしまうのではないでしょうか。余計なこととは思いますが、ネットで基礎分類について記述すれば、日陰の存在であった文久銭もすこしは日の目を見るかな・・・と思い無理を承知で制作をはじめました。したがって分類は本当に基礎的なものに留めています。未収品も多いのですがご笑覧下さい。
なお、制作にあたり文久永宝分類譜(小林茂之著)から拓影を拝借しています。(無断借用になってしまいました。問題があれば削除しますので関係者の方、お許し下さい。)
 
オークションネット 銀座コイン 収集 大和文庫
 
1. 文久永寶の細道 目次
2.  草文の類 試鋳銭二十一波・広郭・広郭刔輪・中郭
3.  玉寶の類 広郭・中郭・細郭・小字
4.  真文の類 基本分類
5. 深字系 狭永類 深字系 広永類 深字系 深字手類
直永系 直永の類  直永系 細字・繊字の類  広穿楷書類
【基本分類】
草文の類 玉宝の類 真文の類
文・寶の字が【攵・寶】となります。 文・寶の字が【攵・宝】となります。略宝とも言われます。 文・寶の字が【文・寶】になります。変化が多く以下のようにさらに分類されます。

 
【真文の類:深字系】
名前の通り深彫りのものが多いのが特徴ですが、深字手のように書体系統は同じでも彫りが深くならない類も入っていますので、永字が短柱永になる点を注意したほうが良いかもしれません。文字はやや太く素朴な感じがします。永フ画が郭に接しない狭永類、永頭が長く幅広になる広永類、彫りが浅いものが散見され大王寶になる深字手類に小分類されます。
深字狭永の類 深字広永の類 深字手の類
彫りが深く、永字の幅の狭いもの。フ画は離郭します。さらに狭久・勁久・降久に分けられます。 彫りが深く、永字の横幅の広いもの。永柱やや仰ぎフ画は接郭します。寶王画が小さいのが普通。小変化が多く見られます。 永字の横幅が広いものの彫りがやや浅いものが多くなります。寶王画が大きく、末画が水平に貝画に接します。広久と短久とに分類されます。
 
【真文の類:直永系】 【真文の類:広穿系
直永とはなんとも苦しいネーミングですが、個人的には文字がすべてふんぞり返っているような印象を受けています。久字の足の広がりが広く、寶字がはっきり進んで仰ぐ傾向にあります。     文久の真文といえばこの整然とした書体をさすと言われるほどポピュラーな銭種です。
直永の類 細字・繊字の類 広穿楷書の類
永柱が長く直立、反柱永気味で俯頭永気味になるものがほとんどです。変化が多く、珍銭が多いのも特徴です。   直永手ともされます。文字が細くなりますが直永が反柱永気味なのに対し湾柱永気味になります。   文字が整然としています。穿が広いので永字が縦長になります。永点は柱の右側には出ません。
 

 
【草文の類】
文・寶の字が【攵・寶】となります。鋳造は金座の管轄で書体は老中の板倉勝静のものです。基本的な書体変化はほとんどないのですが、輪や郭に対する微妙な加刀が見られます。制作は比較的安定していますが存在はとても多くありふれています。
 
試鋳銭 背二十一波 【評価 大珍】
これは収集の対象外でしょうが、過去に何度かオークション市場に現れています。この画像は平成16年のオークションネットⅣに掲載されたもの。平成17年のCCFオークションにも再出品されています。
濶縁広郭        【評価 10】
文・寶の字が【攵・寶】となるものの代表銭です。これが刔輪、削郭されて以下のものに変化してゆきます。草文類の存在は非常に多く、ありふれています。
広郭刔輪        【評価 10】
濶縁広郭が刔輪され、文字が輪からわずかに離れます。磨輪されたものも存在するようです。
中郭刔輪        【評価 10】
郭が細くなり、文字も離れすっきりします。さらに郭が細く変化したものも(細郭)存在します。末期制作のもののようで状態の良くないものが多いようです。母銭は草文中最も少ないようです。
背大錯笵(参考)    【評価 3】
文久永寶には背のズレが散見されます。これは鋳型崩れによるものと思われますが、大きくずれたものはなかなか少ないと思います。

→ 錯笵銭物語
長郭          【評価 8】
広穿長郭になります。文末尾が永字上部まで伸び、郭が細く縦長になるため寶冠右肩が郭上辺部より下がります。また、背の最下部の波は草文の中では最も大きくなります。

(文久永宝分類譜から借拓)
白銅母?
白銅の母ということで入手したが、輪側面のやすり目が気に入らないのでとりあえず疑問品ということにしておきます。

※錫母を模した贋作だと思われます。銀写しとは異なるようです。
 
 
【玉寶の類】
文・寶の字が【攵・宝】となります。草文略宝とも呼ばれます。鋳造は金座の管轄で書体は政事総裁の松平慶永によるものです。やはり基本的な書体変化はほとんどないのですが、小字という絶対的な珍品が見られます。
広郭(背低波)     【評価 10】
濶縁広郭肥字の名称があるように、文字が相対的に太くなります。背波の形状が以下のものと異なり、上部の波の角度が緩やかです。
中郭(背高波)     【評価 10】
文字が相対的に細くなり、輪幅も細くなります。上部の背波は角度が急になる特徴を持っています。郭の幅は個体差が多く、広郭気味のものから以下に掲示するような細郭に近いものまでが存在するようです。美銭が多い。
細郭(背高波)     【評価 10】
中郭の母銭を改造して鋳造したもので、そのため錫母銭は存在しません。製造工程からすると上掲の中郭とは別種になるのですが、郭幅のやや広めの中間的なものあって完全には分類できません。末期のものらしく粗銭が多いようです。
小字          【評価 大珍】
文久銭の中の最高珍品。稟議銭とする説もありますが、通用銭からの撰出し例もあるようで、わずかながら一般にも流通したもののようです。正品が市場に現れることは稀だそうで、この画像は金幣塔様からいただいたありがたい画像でございます。ひれ伏してご拝見下さい。

(金幣塔氏提供画像)
参考)文久小字広郭無背
試鋳銭で日銀の蔵品と同じ系列であるといいます。入札誌駿河376号に掲載された珍品です。ペン書風であり、面背の広郭ぶりが目立ちます。詳細については私は分かりませんが・・・。
※出品価格180000円
(大和文庫 月刊入札誌駿河376号より転載)
参考)寛永座試鋳 光緒通寶
これも詳細については私は判らないのですが、文久永寶を鋳造する前の試鋳貨ということです。銅色は文政期の寛永銭にそっくりです。(オークションネットⅥカタログより)
文久座とも俗に言われていますが、光緒元年は明治8年なので俗説に過ぎないようです。また、色調からすると文政座の誤伝ではないでしょうか?いずれにしてもありえません。
参考)猿匍駒背文久玉寶 【評価 7】
これは絵銭。時代は比較的新しいものだと思いますが、鋳写し技法の少し珍しいもの。文久銭は彫りが浅いものが多ので鋳写しにはあまり適さないため直鋳の絵銭は少なく、新作ファンタジー系絵銭がほとんどです。この品は猿匍駒と張り合わせた母銭からおそらく作成したものです。ご参考までに・・・。
 
次のページへ
 
新寛永通寶分類譜 古寛永基礎分類譜 赤錆の館
天保銭の小部屋 文久永寶の細道
 
文久永寶美星倶楽部