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36.岡山進永銭

とりあえず岡山の名前を冠していますが、制作や書体的に岡山とは言い切れないと思います。進永については永字がわずかに進む癖があることからの命名なのですが、あまり進永には見えないものも多いようです。
進永は大きく分けて3系統になると思います。

1.降通昂フ永になる本体系
2.降通で文字の小さい小字降通(狭足寶平永)系
3.降通にならない小字と小字縮通(縮寛)の系統

古寛永泉志では進永は太細の類ではないかとの推論がありましたが書体的には後者2つは太細の系統でも良いと思います。(あくまでも個人的な見解ですが・・・。)また、本体の方は仙台の寛字に書風が似ています。
共通点は文字がやや離郭することと、特に細い文字であること、寛尾が短くやや外跳ね気味で永柱の位置が名前どおりやや進むことです。

進永 進永小字
 進永小字縮通 などの銭種があります。
 
特徴:中字書体で文字が離郭する。書体は比較的細い。
進永           【評価 8】
文字はやはりやや離郭気味。進永という名称ながら、あまりその特色は感じない。寛字が抱寛冠で本体はやや昂フ永で通字がやや降る。細字のものが多い。太細の系統である・・・という説があるが、書体の癖が強く、個人的には別系統であると思っている。古寛永岡山銭泉譜では仙台銭寛字系と位置づけたようだが、銅質、制作こそ異なるが書風についてはその通りかもしれない。

→ 仙台銭寛字
進永小字降通(狭足寶平永)【評価 8】
文字が細く、永字が平たくなっている。銭譜では進永狭足寶平永が正式な名称。文字は全体的に縮小していて、本来ならば小字あるいは縮寛の名称でも良いと思うが、小字や縮寛と分類されるものが他にありこれは通字が降らない。分かりやすく進永小字降通の名称で良いと思う。岡山銭泉譜では進永中字仰柱永。なるほどな・・・と思う。
進永小字縮通         【評価 8】
これも分かりやすく進永縮寛から進永小字縮通に勝手ながら改称した。改称通り縮寛というより縮通で、古寛永泉志では平永でないと言うが立派な平永(短柱永)であると思う。(降通よりは平永ではないが・・・)この書体は太細に一番近いものだと私考する。寶足は上掲品より横に開く。
進永小字縮通俯頭辵      【評価 8】
古寛永泉志では進永縮寛俯頭辵。わずかに寛足が低く、寛字が離輪する。通頭が気持ち大きい。通辵の頭が急角度で俯す特徴が判りやすい。
進永短尾永        【評価 8】
本体銭の永尾が短くなる変化だが、それだけで印象が全く変わってしまう。
 
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37.太細銭

この類は元々松本銭として分類されていました。ところが竹田銭として分類されていた斜寶類が松本銭と認定されるに至って、この太細類は銭籍さえ失ってしまいました。不知銭という名称は、古寛永全般の鋳地が判明していない状態では受け容れがたいものがあります。そこで書体の特徴を独立させ太細銭という名称を冠することにしました。この類も岡山銭と同様に書体の微細変化が激しく、分類については非常に苦労させられます。基本的には中字書体で永字の左右画はバランス良く広がります。文字も銭面の中央にきちんと納まっています。永尾は屈曲して曳尾となりやや太くなる傾向があります。太細の名称の由来は、基本銭の永柱が永頭に比べて太く見えることからですが、例外も多くあります。とくに末鋳の小様銭については本当に収集家泣かせです。とにかく小変化が多く、すべてを羅列することは不可能ですので、基本銭を中心に掲示します。

太細 と 幺永、歪永 の類などがあります。
 
特徴:中字平永書体で永柱のみが太くなる特徴がある。永字の左右バランスも良い。短尾外跳寛の傾向がある。永尾が屈曲するのが基本である。
太細長尾永           【評価 9】
永尾が波行して長い・・・ということだが、太細の細縁大字の感が強い。永尾が長く、輪に近い。

→ 俯永手

→ 水戸放永銭

→ 岡山短尾寛銭
太細短尾寛背濶縁広郭     【評価 6】
寛尾が短く鋭く跳ねる。短尾寛には背が極端な濶縁になるものがある。気づきにくいが面白い変化である。やや狭目寛にもなる。
太細短爪寛         【評価 6】
寛爪が短く永字書風がどことなく幺永、歪永に似ているもの。書体は大きい。とくに寛目幅が広い。
太細幺永手(替)     【評価 6】
幺永手は永尾が跳ねるのが普通だが、幺永手の変化と判断している。寛目が巨大で寶字も大きい。また、通字のしんにょうの形状も変わっている。永字は平たく巨大である。
いづみ会の分類では短爪寛肥字としている。
太細長寶            【評価 7】
狭目寛、狭通、狭貝寶である。短爪寛の特徴とは対極にある。
太細大寶(仰頭永)     【評価 8】
寶足が長く大きい。本銭は大寶の基準とするには不適当な書体かもしれない。本体は寶前足がもっと直線的に伸びる。

※本銭は削字の感が強い。岡山進永や短尾寛との類似性があるようにも感じられる。

※この分類で良いのか自信がなくなってきました。やはり古寛永は難しいです。
太細幺永            【評価 5】
非常に個性あふれる書体である。太細の名前はあるものの文字の太細はほとんどない。永尾も棒状である。昂通でもある。
太細幺永小字          【評価 5】
永ノ画の短いもの。やはり昂通になる。
太細歪永          【評価 4】
濶縁で文字の変形が著しい。新寛永の日光銭を思わせる書風である。
太細歪永内跳寛(母銭)   【評価 少】
寛足が内跳に変化しているもの。微細変化だが有名でなかなか少ないもの。評価は母銭に対するもので、通用銭は1~2位の評価だと思う。

(平成17年銀座コインオークションカタログより)
太細中字(短尾寛)    【評価 8】
非常に整った書体でこれといった特徴がない。永柱も太くならない。永末尾は鋭く方折する。一見すると太細の類には見えない。掲示品は寛尾が短く変化している。書体的には太細とは別系統であると感じている。

※以下の銭種については岡山銭との類似性強く、分類に非常に迷うものである。これは岡山で良いかもしれない。
太細小字(縮通)     【評価 9】
岡山の進永小字に似るが永尾が長く屈曲する。通字の小ささが目立つ。いづみ会では太細狭寛の類か?
太細小字小様       【評価 9】
太細小字には特に銭径が小さくなるものが存在する。掲示品の直径は23.4㎜。文字が陰起するものが多いかもしれない。小様だが狭穿であることから末鋳によるものではなく、はじめからの規格であろう。
太細縮通
(オークション・ネットの古銭入札誌(二)より)
太細の類は特に分類が難しく、なかでも岡山の俯永手や進永との区別が非常に難しいと思います。迷ったら必ずこれらの拓図との比較を行なうようにした方が無難です。
あるいは、太細の類を俯永手と統合して独立させてしまうことも考えられます。個人的にはこの方が判りやすいと思いますが・・・。
→ 岡山俯永手
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