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19.水戸正字銭

古寛永において正字と言えばこの銭貨を指すと言っても過言ではないと思います。それだけにもっとも標準的な書体であり、それなりの格と言いますか風格のようなものも持ち合わせている銭貨です。背星文類と並び古寛永の標準書体銭であると思って良いと思います。非常に平凡な書体ですが、背星文や星文手と異なる絶対的な特徴を持っています。それが文字が寄郭するという点です。平凡な書体を見たら文字の配置を見る・・・これが鉄則です。正字縮字の書体はは同炉には見えないため他籍に移動させます。

正字 正字広永 に大別されます。
 
特徴:背星文に似た端整で整然とした書体ながら文字が寄郭する。
正字                【評価 10】
これといった特徴がない整然とした書体。美制で銅色黄褐色、文字が寄郭するのが通常である。仙台銭正字手はこの銭貨に似ているということだが、本家の方が文字が大きくしっかりとしたつくりである。仙台銭正字手の方が刔輪の度合いもきつく、銅色も異なる。外径24.7o、内径20.2o。
正字広永             【評価 9】
たしかに広永であるが、こころもち本体より大字であるような感じがする。一方で刔輪の度合は少しだけきつく見えるものが多い。ある意味で新寛永の細縁銭のような存在かもしれない。外径24.65o、内径20.5o。
鋳写しが当たり前の古寛永の世界だからこそ、ノギス計測による分類や本体銭の探求が必要かもしれない。
正字縮字平永 正字縮字
穴銭入門(静岡いづみ会編)古寛永の部より

拓影の差かもしれませんが、このように言われてしまえばそのように思えてしまうから困ったものです。泉志との拓影とも微妙に異なるようで、泉志は平永系を本体にしているようです。平永は小王寶でさらに小字になり、こちらは短尾寛系の書体です。願わくばいづみ会の言う本体を入手して観察してみたいと思います。ただし、位付けから見ると縮字本体はかなりの珍品のようです。
正字刔輪
ときとして刔輪の度合いのきついものに出会えるかもしれません。これはさらに珍品のようです。
 
 
  
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20.水戸宏足寛手類

これはもう寄せ集めと言われても仕方ありません。存在も多く、微妙な書体の違いはありますが、基本的には水戸正字や星文手に書体や制作が近似しているものの集合体です。当初は水戸正字手類銭と名づけたのですが、正字が寄郭の特徴を持っているのに対しこれらは必ずしもその特徴を持っているわけではありませんし、離隔の傾向を持つものさえあります。寛足がやや退く特徴を持っているものが多いため、その代表銭の宏足寛の名をもらい宏足寛手類と名づけることにしました。鋳写しによって濶縁小字になる変化も多く、書体の崩れもあって判別は困難を極めます。したがって判らなかったら飛ばしても良いと思います。古寛永で迷ったらこの手か星文手か岡山・・・そんなところでしょう。なお変化は到底すべてを掲示できる範囲ではありませんし、蔵品にないものも多数あります。とりあえず参考掲示しますので、画像が増えるのを気長にお待ち下さい。

なお、この分類名称は私が勝手につけた仮称です。一般的に通用する名称ではありません。

 
特徴:寛足分岐が退くものが多い。文字が離郭するもの、寶後足が短くなるものが多い。
宏足寛(窄目寛)        【評価 8】
星文手の系統を引く銭貨で、基本銭はやや離郭する。ただし、鋳造変化の過程で覆輪、刔輪が行われたようで末鋳のものは逆に輪から離れるのが目立つ場合もある。寛足の分岐点が右側に寄るのが最大のポイント。いわゆる退足寛である。ただし、狭足寛や勁永手と呼ばれる銭貨も同じ特徴を持っている。狭足寛との差は寛の後足でこの部分が幅広く方折していることから宏足寛と名づけられたのであろうが、現実的にはちっとも広くなんか見えず、分類上の名前にすぎない。銅色は黄褐色のものが多いが、制作がいまひとつのものが多いようである。
宏足寛濶縁(張足寶)    【評価 8】
濶縁小字になる。書体はかなり崩れている。背は浅く輪が不揃いのものが多い。濶縁系のものは文字変化が著しく、判断がすごく難しいものが多い。掲示品も永字が平濶に変化しており、一瞬、斜寶と錯覚してしまう書体である。
宏足寛退頭通濶縁      【評価 7】
同じ系統のものにはとても見えない。退頭通は永字が狭永(短尾永)に変化する癖がある。背輪は乱れいびつであるのがこの類の特徴。とても本体銭と同じには見えないので入手直後には大いに迷った一品である。
文字の崩れが岡山銭の婉文濶縁に良く似ていると思う。


→ 岡山婉文
勁永手              【評価 8】
古寛永泉志では勁永類とされているが宏足寛の勁永手と言った方が正しいと思う。永フ画が右肩下がりである点がポイントで、寛字の特徴は宏足寛とほぼ同じである。永字の書風が勁永に近似している。
勁永(白銅銭)       【評価 6】
総体的に文字の強さを感じるが、特に永末尾のはらいに筆だまりがあり、それから鋭く払いが起きているような感じがある。永フ画が上がりかつ俯す。そのためなんとなく永字の左右バランスが悪く感じる。銅色は黄褐色のものが多いが白銅銭も存在する。(通常銭は8位)宏足寛と異なりこちらは美銭が多い。
勁永小永          【評価 9】
永字ノ画の打ち込み部分が極端に短い。文字深彫りで美銭が多い。これも入手直後は珍銭では・・・と思ってしまったが雑銭です。勁永も削字変化が多く、本体銭との差異が著しい。
勁永小目寛         【評価 4】
勁永の小変化であろうか。寛目、寶貝ともやや下すぼみ気味に狭く小さくなる。また、王画も狭いので狭寶、狭通気味。結果としてやや小字の系統の書体変化になるが永字は大きく見える。なお、当銭については地が鋳ざらったように平滑になっている。背輪の縁も加刀されやや細縁であり、母銭的な仕上げだが、私には判断はできない。
短足寶              【評価 7】
勁永風の書体である。寶後足の短さが非常に目立つ。ただし、狭足寛と呼ばれる類も同じ特徴を持っている。狭足寛と異なり俯寶、内跳寛である。通頭もやや前に出ている。
短足寶進点永        【評価 4】
これはほぼ一手の書体である。短足寶であるが、書体がかなり崩れ、通頭大きく永点が著しく進む。また破見、破寛でもある。画像で見る限り退足寛である。存在は少ない。
狭足寛              【評価 8】
短足寶であり、退足寛でもあり、仰見寛、仰貝寶である。宏足寛に比べて寛後足が短いためこの名称がつけられている。通頭が大きいのも見所である。なお、岡山銭の短尾寛や進永に雰囲気が似ているので参照して欲しい。寛尾もやや短い。寛字は次の大目寛に良く似ている。
狭足寛濶縁         【評価 7】
狭足寛の濶縁縮字銭。書体が崩れ判別に迷うが、寛尾や寶後足の特徴で分類が可能である。上のものと比較すると背の濶縁ぶりが目立つ。
大目寛              【評価 7】
これはほぼ一手しか存在しないので覚えやすい銭貨である。寛目が大きくしかも全体的に仰ぐ癖がある。寶後足がやや短い。これもやや寛尾が短い。
 
穴銭入門(静岡いづみ会編)古寛永の部より

この類は書体変化が多く、非常に紛らわしいので画像より基本銭の拓をならべて比較する方が判別しやすいと思います。(こういうケースは拓本の方が優れています。)寛足の分岐点がポイントになりますが例外もあります。文字がどちらかと言えば離郭気味なこと、銭種によって永フ画や寶後足の長さが短くなることに注意してゆきましょう。旧譜の問題はこれらの銭種に類似点が多いのに、間に力永や放永などの別系統銭種を挟んで掲示していて非常に見づらい点にありますので、今後出版計画のある方は是非掲示順をご検討下さい。
宏足寛 勁永手 勁永 短足寶 短足寶進点永
退足寛の代表書体。変化がとくに激しい。 フ画が右下がりで、永尾に筆だまりがある。 フ画が左下がりで、永尾に筆だまりがある。寶後足は短くなる傾向。 勁永系の書体で寶後足がとくに短いもの。 寶後足が極端に短く永点が進む。書体は一手。
狭足寛 大目寛
同じ特徴だが書風が違う。寛尾は郭の内側にある。短尾寛。 書風は狭足寛に類似。比較して下さい。寛目が巨大。
勁永高寛 勁永縮字 勁永仰頭通
勁永の縮字変化の例 どれも珍品ばかりです。永フ画の形状が異なり、別系統かもしれません。参考までに・・・。
  
   
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21.岡山短尾寛銭

とりあえず岡山の名前を冠していますが、制作や書体的に岡山ではない・・・と思われるものを集めています。短尾寛については水戸狭足寛と書体的に近似し、古寛永泉志では同類ではないかと、断定的な記載もみられます。また、母銭が未使用の御蔵銭のサシから発見されたこともありますので、銭籍についてはあくまでも仮のものだといえます。
水戸正字縮字は書風に近似性が認められるためにここに仮籍をおくことにします。また、旧来太細とされていた太細内跳寛についても、その書風から籍を移動してここに統合します。
以上、ここにまとめた類はさらに雑多性を極めています。いわゆる半端物の吹き溜まりですが、これらをまとめておくことによって、古寛永の分類がしやすくなると思います。無理な照合はあきらめて分からなかったら飛ばして閲覧して下さい。

なお、当初はここに岡山進永の類を入れていたのですが、やはり印象の差が大きく混乱の元になりますので、巻末に移動させました。

短尾寛 正字縮字 太細内跳寛  などの銭種があります。矛盾は残りますが名称はあえて変更していません。
 
特徴:中字書体で文字がやや離郭する。書体は比較的まとまっているが文字にやや太細変化があり素朴。
短尾寛(大型銭:外径25.2o)【評価 1】
別名の狭足寛手の通り、寛足、寶足の癖以外はほとんど変わらない書体である。わずかに寛目が小さく、寛足の分岐点が中央付近になること、寛尾の跳ねが短いこと、寶足が揃っていることなどが異なる。文字はやや離郭気味。画像の品の直径は25oを越える大型のもの。文字繊細で外径はふたまわり(1oくらい)は大きい母銭あるいは手本銭と思われる品。いわゆる古寛永の大様銭とされるものには至らないがかなりの珍品だと思う。
短尾寛(降水)          【評価 8】
降水の名称はやや分かりづらく、短尾寛小字で良いと思う。永字はやや仰ぐ。古寛永岡山銭泉譜では小字仰永とされたもの。永字が短めでやや扁平に見えるものが降水に該当するようだ。称:岡山短尾寛の類は文字が細くなる傾向。
正字縮字平永(短尾寛大字) 【評価 7】
これについては(水戸)正字の名称がついているものの別炉の感が強く岡山短尾寛や進永、太細の類にも近似していると思う。岡山短尾寛本体より狭貝寶である。正字縮字は(古寛永泉志によると)岡山泉譜(古寛永岡山銭泉譜の前譜?)では短尾寛系縮字とされたそうで、短尾寛降水大字とした方が自然であると思う。
正字縮字平永        【評価 7】
最近入手したものです。実に困ったことになりました。銅色、制作ともこれなら水戸銭としても違和感がありません。良く見ると寛足、通字の傾き、永の払いなどに微差があります。

※水戸銭に戻すのはもうしばらくお待ち下さい。
太細内跳寛         【評価 8】
太細の系統として分類されていますが、文字が離郭して太細の特徴に欠け個人的に太細ではないと思っています。この項に移動した根拠・・・直感だけです。あしからず。

→ 太細銭
 
 
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