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33.岡山長嘯子銭

古来より木下長嘯子少将若狭の守勝俊の書として伝承されている長嘯子と名づけられた書体と、それに類似する一群のものを岡山長嘯子銭として独立させました。永字幅広で永頭も長く、独特の書体のうねりがある銭貨群で長嘯子とそれに似た書体で短柱永の長嘯子小字に分類されます。さらにそれらは細字になるものと肥字になるものに分類でき、通頭の高さでも分類ができます。また、旧譜で俯永濶縁小字とされたものは、長嘯子肥字の縮字としても良いような書体ですので、あえてこの類に含めることにしました。
書風は前掲の岡山長尾永や俯永に近似しているところがありますが、独特の癖があります。存在もかなり少ないと思います。

長嘯子 と 長嘯子小字 長嘯子肥字 に大別されます。ここに 濶縁小字 を加えてこの類とします。
 
特徴:永頭が長く、永字が平たく長尾永になる。書体は奔放で伸びやか。
長嘯子(破寛)       【評価 少】
本来ならば、秘宝館にご登場願う品物なのですが、基本的な書体?ということであえてご登場願いました。独特な気品漂う書体をとくとご覧下さい。破寛は寛字の後冠に鋳切れがあるもので古来からの有名品である。

※細字で永柱、永頭とも長い。全体に長字です。

(平成17年銀座コインオークションカタログより)
長嘯子小字(短尾寛)    【評価 4】
本体銭に非常に近似した書風。細字であること、平永であることが目立つ。通頭が大きく、縦画が仰ぐ。本銭は寛尾が陰起気味で短い。なお、古寛永泉志では寶足の開きが狭いとされているが、本銭については該当していない。背が長郭気味になるのは本体と同様である。

→ 岡山長尾永銭
長嘯子小字低頭通       【評価 4】
通頭が低く俯す。通用画の第1画が短く、しんにょうに接しない。また寛後足が長く、郭の右側にはみ出ている。低頭通は背郭については必ずしも長郭気味とはいえないかもしれない。
長嘯子低頭通肥字      【評価 4】
書体については上図とほぼ同じ、ただし文字が太く変化している。
長嘯子肥字           【評価 4】
長嘯子小字と書風は確かに似ているがさらに小字となり別種である。寛尾はやや内跳ねである。
長嘯子肥字進点寛      【評価 4】
良く似ているが寛点が進む。通頭が小さく、永尾も太い。
濶縁小字            【評価 2】
古寛永泉志では俯永濶縁小字の名称。こうして並べてみると書体の癖が長嘯子に近いものがある。肉厚がたっぷりしているのも同様であり、ひとまずこの類に仮籍をおくものとする。抬頭永気味で寛爪がやや下を向く。背長郭傾向も他の長嘯子類と同じである。

※掲示品は貨幣273号を飾った原品で濶縁厚肉の名品です。
 
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34.岡山良恕銭

古来より良恕法親王の書として伝承されています。寶王画と尓の初画がつながる独特の書体です。インパクトのある名称と分かりやすい書体のため非常に人気のある銭貨です。銅色はやや赤味のある黄褐色が多いようです。

良恕 と 良恕小字 と 良恕手 に大別されます。
 
特徴:寶王と尓が連続するのが基本。永字が千木永風に両端が跳ね上がる。文字大きく伸びやか。 
良恕               【評価 4】
寶尓の初画が長く、王画の末画と連なる。永字は長嘯子に似ているがやや跳永気味に両端が跳ね上がる癖がある。掲示品は初鋳銭に近いもので文字が大きい。ランクをひとつ上げても良いかもしれない。
良恕細縁         【評価 2】
文字大きく、わずかに刔輪されて細縁になるもの。存在はさらに少なくなる。寶尓の後点と通辵頭が長くなる特徴を持つ。久泉研究資料によると内径が20㎜以上あるものを細縁とすべきだと思う。
良恕小字(削頭尓)    【評価 5】
寛永の文字は小さいが、通寶の文字は逆に大きくなる。尓の初画が寶冠から離れている。通常このタイプ(削頭尓)は永点が削られて進点永気味になるものが多いが、掲示品は小点永ながらも進点永にはなっていない。本体に比べて小字は仰寶気味である。
良恕小字濶縁       【評価 5】
良恕小字の濶縁縮字銭。
良恕小字濶縁(母銭様)
文字抜けが良く、オークションでは母銭と表示されていたが、内径は上掲品と同じ。濶縁らしく見えないのはやや磨輪されているから参考品として掲示した。。
良恕小字進点永(磨輪)  【評価 6】
永点も削られているため小さく、進んでいるように見える。外径が23㎜と極端に小さいのは、濶縁縮字銭を磨輪したためである。もちろん、磨輪銭でないものも存在する。
良恕手(大様)         【評価 7】
良恕の特徴の連王尓である。濶縁縮字で、寶後足が短いのもポイント。非連王尓のものもある。掲示品は良恕手としては最大様に近いもので、通常は24㎜以下のものが多い。外径24.4㎜内径19.2㎜。上掲銭より立派で区別に迷うが寶貝を比較すると良恕手が短くやや俯すのに対して、本体系は長くやや仰ぐ。また尓と王画との連なりも本体系は滑らかな曲線を描き、王、尓とも大きいのに比べ、直線的で小さくなる。(短寶になる。)
良恕手平永        【評価 6】
通頭や寶字は小さいが、良恕と筆法がほとんど同じである。本銭は古銭家として有名な小川浩氏が愛蔵していたものということ。寛永銭譜を飾った現品。

(平成15年銀座コインオークションカタログより)
良恕手不連玉尓      【評価 8】
良恕系の特徴である、玉末画と尓初画の連なりが断ち切られてしまっています。
良恕手長足寶          【評価 7】
本体に比べて寶貝画字が大きく長くなり、寶後足が長い。気持ち俯柱永でもある。寶尓と王画は不連続であると、古寛永泉志には記述があるが微妙に連なっているように見える。通頭は開口部が狭くなる。
 
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35.岡山婉文銭

婉文とはしとやかな(女性らしい、なよなよした)・・・という意味です。高寛、小目寛、短足寶であり、平永気味です。初出のものは文字繊細なのですが濶縁縮字のものはわずかに書風を残すのみで、全く違った印象を持っています。背の地がざらついて輪や郭が歪むものがなぜか多いような気がします。

婉曲 と 婉文濶縁 などがあります。
  
特徴:文字に勢いが感じられない。寶後足が短くなる。
 
婉文               【評価 8】
文字が細く弱々しい。これといった特徴に欠けるものの文字の癖は実に強い。仰通、俯寶である。背の粗末なものがなぜか多い。
婉文背濶縁広郭         【評価 7】
みごとな濶縁背広郭であるが、同時に何とも言えない歪みがある。婉文は不整形の背が多く、類似変化は水戸宏足寛類と太細類、吉田銭類にもときおり見られると思う。

背郭が丸くならず歪む、輪内径が不整形で大濶縁になるのはどういうメカニズムなのか?
母銭が砂型の中で回るとするともうすこし含円郭になると思う。
私見としての考察は・・・型抜きされた後の背型が物理的に上から押しつぶされた(背側の砂笵の硬度不足)変化なのだが・・・やはり謎。
婉文濶縁            【評価 4】
濶縁縮字になり、かなり変化している。覆輪技法によるものだと思われるが。掲示品のような大濶縁はかなり少ないと思う。私見だが制作的な印象は水戸宏足寛退頭通濶縁に似ていると思う。

→ 水戸宏足寛
婉文覆輪          【評価 2】
覆輪と言う名称がはたして正しいのか判りかねるが、24.85~24.9㎜の外径の婉文濶縁である。面側は上部が広く、背側は下部の輪が広く、後天的なたたき伸ばしではなさそうである。
本当ならもっと高い評価にすべきところながら、磨きが入っているので評価は控えめにした。内径は上掲載の銭とほぼ同じ。
婉文濶縁大様銭
外径26㎜を越す堂々たる大様銭。郭の鋳不足が残念だがなかなか少ないものであると思う。

(平成17年銀座コインオークションカタログより)
 
 
 
 
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