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30.仙台長尾永銭

古寛永泉志には正永の派生種として、正永長尾永と正永長尾永小字が、寛永通寶(古寛永)大分類の手引きには古寛永泉志でいう正永長尾永小字が正永の代表銭として掲載されています。先にも書きましたが古寛永の分類において私が悩みぬいた最大の元凶であり、ここらで修正をしなければ・・・と感じます。はじめは正永を正字手の類に残し、長尾永だけを独立させていましたが、最近長尾永は仙台銭と位置づけても良いと思うようになったのですが、今度は正永の行き場がなくなってしまいました。長尾永を仙台銭に戻し、正永を独立させることも考えたのですが、正永はとにかく特徴がない銭貨のため分類上困ってしまいます。とはいえ実見したサンプルが少ないため、これは個人的見解に過ぎないと言われてもしかたないと思います。
そこでとりあえずは旧説を尊重し、この類を独立させることにして時間稼ぎをすることにしました。私もサンプルを集め納得の行く分類を果たしたいと思います。

正永 長尾永 長尾永小字 の類に分類されます。
 
並べて比較! 仙台正永類とされている銭たち
正永 長尾永 長尾永小字
正永は文字に抑揚が少なく、どろんとした印象。とにかく特徴がない。銅質は茶褐色で練れが良く、肌が滑らかで柔らかい感じのものが多い。
長尾永は通頭大きく、永尾が長く払いが太く跳ね気味。太細に印象が似ているがこちらのほうが文字が大きい。また太細は通用画が反通気味で辵頭が水平。寶貝も大きい。放永手にはそっくりで拓で見る限り放永手との差異は寶字くらいである。(放永手は尓の前点が柱から離れ寶貝が細い。)背郭は正永と異なりきりっとした感じ。背輪とともに加刀されている感じがする。
長尾永小字は長尾永の濶縁小字と考えられなくもないが、文字の太細があり、文字の谷間の肌がざらついて粗い感じがする。文字は加刀修飾されており、細字に変化している。この書風変化は寛字や正字手の加工手法に近い。長尾永小字以外は文字の特徴が少なく、間違えやすい銭種の筆頭格である。
 
正永           【評価 5】
筆勢がなく、特徴に乏しい書体だと思う。文字が大きく正しく銭面に収まる。この文字の大きさは大字長永とした類と星文手、長門銭くらいしかない。他銭と比較していただきたいが、とにかく特徴がないのが特徴である。ただ、気になるのは確かに寛字系の書風ではあるが銅質がやや赤味を帯びた黄褐色が多く作は粗末だが肌は滑らかなものが多いこと。この点が以下の類とちょっと異なるのである。また、長尾永とは制作や書風も全く異なると思う。
長尾永                 【評価 7】
一見して太細長尾永の類、放永手に近似して見える。文字点が太くなる癖があり、寶冠前点が垂直になる。いづみ会では寛字延冠と分類している。
→ 仙台正字手 

→ 放永手(そっくりさん集合4)
長尾永小字               【評価 8】
仙台銭とされても納得の行く銅質と書風。正永と同炉というににはなにかが違うと思う。
 
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31.岡山長尾永銭

岡山銭というと俯永という名前がまず挙がってきますが、永尾が長くなるという分類のための書体の類似性を考えると、旧譜でいう岡山銭の俯頭永類をまず挙げる必要があると思います。俯頭永という名称は実に中途半端な名称で、俯永とも混同しやすく書体の特徴を表していません。また、俯頭永といってもわずかです。いっそのこと長嘯子と統合してしまったほうが良いような気がしますが、俯頭永は永字が曳尾になる特徴に加えて寶足がアンバランスになるという確実な相違点がありますし、書体的には長嘯子より俯永に類似していますので、長尾永と分類名を変えて独立させることにしました。

長尾永 と 躓寛 の類に大別されます。
特徴:永字平たく永尾が波行する。永フ画が俯す。俯頭永、俯頭辵で、寶後足が長く垂れ下がる。
 
長尾永(俯頭永)        【評価 8】
永字が平滑で長く尾を引きうねりがある。永フ画が左下がりで寶足のバランスが悪いのが目立つ。また背郭は広郭で立派で彫りも深い。通字のしんにょうの頭が俯すのも特徴。銅色は茶褐色~黄褐色が多い。

→ 岡山長嘯子銭
長尾永(俯頭永)跪寛    【評価 8】
寛前足が短く変化し、ひざまづいたような感じを表している。通字のしんにょうの頭が短く変化している。
 
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32.岡山俯永銭

岡山銭の代表格書体であり、大量に作られた上に文字の微細変化が多く、非常に分類に悩む銭種です。基本的には永頭が俯すという特徴があり、また永フ画が左下がりになるものが多いのですが例外もあります。そのため俯永という名称はこれらの銭貨を統合するための名称であり、必ずしも書体特徴を表しているわけではありません。

書体変化が非常に多いのですが代表的な書体として
 俯永 俯永抬頭永 俯永手 俯永伸寛 俯永小永 俯永短尾永 の類を中心に説明します。
特徴:中字の細字書体。永頭、永フ画が俯すのが基本だが例外も多い。
俯永(異王寶)         【評価 10】
永頭が俯し、フ画が左下がりになるのが俯永の基本である。本銭は異王寶と分類される亜種で、寶王の中画が下がるもの。ただし、雑銭である。
俯永抬頭永         【評価 2】
例外のひとつ。永頭が俯さず、永柱が長い。蛇がかま首をもたげる様子になぞらえ抬頭永(たいとうえい)と名づけられ、古来からの超有名品である。
俯永小永             【評価 4】
永頭は俯すがフ画は右肩下がり(仰フ永)になる例外品。慣れないと水戸銭の勁永小永に間違いやすいが、書体は全く違う。存在は非常に稀である。
俯永短尾永           【評価 4】
これはもう俯永ではない。仰柱永である。永尾浮き上がり短く、小目寛でもある。これも少ない。
俯永伸寛(濶縁)       【評価 4】
伸寛の名称は不明である。俯永の濶縁縮字銭であり、掲示品は特に縁の幅が広いもの。本来は俯永狭永とか、俯永俯頭辵とか、俯永縮字とかに名称変更しても良いと思う。本体は雑銭だが濶縁はちょっと少ない。制作が悪いものが多く、別炉の感がある。
俯永手              【評価 8】
俯永とほぼ同じ書体ながらやや文字大きく永頭はほぼ水平、フ画も水平に近くなる。ポイントのひとつとして寛冠、寶冠の跳ねが単純で、浅めに小さく跳ねること。太細類に近似しており統合しても良いような書体である。

→ 太細銭
→ 水戸放永銭
俯永手小字濶大様       【評価 3】
平成古寛永銭譜の1896番原品です。外径25.27㎜と大きく肉厚であることから特別な品の雰囲気があります。他譜にはこのような大型の品の記載はなく、評価以上の珍品であろうことがうかがえます。
 
俯永の書体変化例
俯永(肥字)          【評価 4】
掲示品は文字がやや太く大きい。俯永大字としても良いようだ。

※いづみ会の分類では珍銭の部類に属していました。通点と通頭が大きいのが肥字の特徴だそうです。
俯永広目寛            【評価 7】
俯永退足寛の亜種で、寛足の分岐点が退き、寛目が幅広い。破見寛、破貝寶、大字である。
俯永平永             【評価 10】
永字のノ画が短い。本銭は円尾寛との中間体で細字高足寛でもある。掲示品は文字の抜けが良く、背に鋳ざらい痕が残り母銭として使用された可能性もある美銭。
俯永小目寛           【評価 6】
類品中、寛目が最も小さくなっている。
俯永縮寛(細二寛)       【評価 5】
低足寛であり、寛後足が郭幅内に納まるため縮寛と呼ばれるが、やや名称は分かりにくい。寛字の二引きが異常に細く寛目の両柱に接するように引かれている特長の方が分かりやすい。永頭の俯す角度がややはっきりしている点、浅背になるところも注目。掲示品は背が細縁になっている。
俯永肥痩永(中字俯寛)  【評価 7】
永字末尾に筆だまりがあり、通点が長く降る。
俯永小頭通            【評価 8】
通頭がわずかに低く角が取れて丸くなっているもの。俯永手にも小頭通があり、それは永字が俯永にならず、通辵底が反らないなどの差異がある。
俯永手濶縁小頭通      【評価 7】
岡山婉文、岡山良恕、太細、など迷うがいずれとも異なり、俯永手の濶縁縮字という籍に落ち着いたもの。婉文とは通字の形が、良恕とは寛字の形が違う。通用、寶貝が大きく見える。ただし、一部の太細とは近似性があると思う。本銭は通頭が小さく、やや円尾寛である。
俯永手蜒頭永          【評価 8】
俯永手であるが永頭が長い。また、やや退足寛である。
 
 
 
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