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27.井之宮銭
この銭貨については、古くから駿河国井之宮(井之寵)の鋳造とされていますが、同地に銭座跡が確認できず、また岡山県二日市銭座跡からの出土報告があり、岡山銭としても良いかもしれません。いづみ会編の穴銭入門では岡山銭として掲載されています。ただし同じ場所からは太細や高頭通、不草点なども発見されていることから、この銭種だけを取上げて岡山銭に変更するまでには至らないと判断しました。古寛永は通用銭から母銭に転用していたことから、出来の良い銭貨は全国各地で母銭として利用されたとも考えられます。期が熟するまで名称変更は待ちたいと思います。書体は不草点類に酷似していますが、他の文字に比べ寛字が小さくなるなどの共通した特徴があります。
縮寛 の類と 長通 の類に分類されます。
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特徴:寛字が他の文字に比べて小さい。永字末画が一回浮上してから輪に向かい波打つ。背郭は反郭気味になることが多い。 |
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縮寛 【評価 9】
寛字が他の文字と比較して小さくなる・・・と、いうより他の文字が大きい。また、やや濶縁気味のものが多い。背が反郭になるのもポイントである。永字最終画の独特なうねりに注目。ノ画の打ち込み角度もきつめ。内径は19ミリ前後だが、初鋳細縁のもの(内径19.4㎜前後)のものがあり濶縁以上に希少である。 |
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縮寛濶縁 【評価 3】
縮寛の濶縁小字銭である。覆輪は古寛永においては良く見かける手法であるが、ここまでの濶縁縮字は気持ちが良い。古来からの有名品である。古寛永の濶縁縮字はたいがい希少である。
なお、掲示品の内径は18.2㎜ほどしかなく、濶縁としても非常に文字が縮小している。 |
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長通(高寛) 【評価 6】
井之宮銭の長永、長通は昔から有名品であり、いずれも永字の形状が独特で一目で井之宮銭である判別できるが、長永と長通の区別は非常に難しい。そもそも名称ばかりが先走り銭貨の特徴をあらわしていないのが問題である。この際、長通に名称統一し、長通高寛と長通低寛に再編すべきではないだろうか。掲示品は寛足高く、寶字足の分岐点がかなり右よりである。寛字以外が巨大であるので覚えやすい。 |
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長永(低寛 【評価 6】
見ての通り掲示品は寛足低く、寶字足の分岐点が中央寄りにある。また通頭が小さい。永頭がわずかに仰ぎ気味に見える。 |
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28.明暦駿河銭(鳥越銭)
この銭貨については、沓谷の間違いではないかとの説があり、いづみ会の穴銭入門では銭籍入れ替えがなされていますが、旧名の定着もあって同じ名称を使用できませんので明暦駿河銭の新名称をつけました、。古寛永の最後期にあたる鋳造で、残存数は非常に多く目立った書体変化もありません。選出は通頭を見れば一目瞭然で、間違うことはありません。なお、この銭貨には面背に星状の鋳だまりがあるものが多く、鋳工のシークレットマークであったかもしれません。
高寛 の類と 低寛 の類に分類されます。
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特徴:通頭が非常に薄く、一本の棒状に見える。 |
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高寛 【評価 10】
通頭が極端に薄くなる。寛足が高く包寛風になる。
※鋳造地の沓谷の呼称は【くつのや】が正しい読みのようです。
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低寛 【評価 10】
通字の特徴は同じ。寛の前垂れがやや開く。背郭の下に星があるが、鳥越銭にはこのような出来星が非常に多く、あるいは意図してつけられたものかもしれない。
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高寛(背星) 【評価 不明】
偶然の星であろうが、それにしても明瞭過ぎる。類品の出現を待っているもの。 |
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29.水戸放永銭
旧来より水戸銭とされていますが、制作や書風とも個人的には納得がいきません。背輪の加刀痕が顕著で深背気味で鋳ざらい痕を残すものも多いと思います。銅質も茶褐色~淡褐色のものが多く、雰囲気的には岡山銭や長門銭に近く感じますが、それとも少し異なります。
放永、放永手 などがあります。 |
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特徴:平永であり、永字フ画が仰ぐため千木永風になる。(放永平永、放永手は永フ画がほぼ水平になる。) |
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放永 【評価 6】
千木永気味の仰フ永、平永。この永の形を覚えておくと、放永はすぐに分類できるようになる。斜王寶、跳尾永の形も特徴的。 |
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放永(平永) 【評価 7】
放永の濶縁縮字なのだろうか?文字が変化し、書風は残すものの永字の特徴は失われている。かつては放永手とされた時代もあったようだが、現在はこの手のものを平永としている。太細の小字類や岡山の俯永手類に非常に近似しており、選出に迷う。離頭通であるからこの類としたが、これらと統合され再分類される日がきっと来ると思う。それだけ紛らわしい書体である。
→ 俯永手
→ 太細銭
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そっくりさん集合! 4 |
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称:水戸放永手 |
称:太細 |
称:仙台長尾永 |
収集 出品拓 |
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やや内跳寛、狭目寛
辵頭が大きく、大頭通
大永、跳尾永
離点尓、狭貝寶 |
外跳寛、短尾寛気味
狭通気味
永字は良く似ている。
寶貝はやや幅広いものが多い。 |
内跳寛、広目寛、抱冠気味
広通気味
平永気味
広貝寶、揚足寶気味 |
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放永手は収集誌に掲載されており、思い切って落札。拓本では間違いないと思いましたが、現品をみて混乱しています。太細とは寛尾の形状が違います。放永手は永尾が跳ね、かつ寶尓が離点であるのが約束ですが、画像では今ひとつです。寛ウ冠は長尾永のほうが抱寛気味。通辵の形状は3種とも微妙に違います。(放永手は辵頭が大きい。)寶貝はたしかに放永手が一番細いのですがやはり画像ではよく判りません。銅質と制作についてはうーん、同じように見えてしまいます。太細との差は本当に微妙です。眼力不足なのでしょうが別座とする差異が判りません。全部同炉でもいいんじゃないのかなぁ?少なくとも大騒ぎするほどの変化じゃないような気がします。
ところでこれ本当に放永手なの???お分かりになる方、ご教授下さい。
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