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15.水戸背星文銭

背星文を標準とする一群で、特徴がないのが特徴というやっかいな銭貨です。その割りに書体変化が多く、文字の大小もけっこう見られます。書体をじっと見て、特徴が少なかったら旧水戸銭か仙台銭あたりを疑うのが常道です。銅色は黄褐色を標準としますが、白銅質気味のものも見られます。毛利家手本銭の検証から背星は坂本銭であるという説がありますが、確定的なものではありません。同様にこれが水戸銭であるという確証もありません。


背星文 と 背星刮去 の類があり、それぞれに文字の大小などの変化があります。 
 
特徴:どちらかといえば文字離郭に見えるが、特筆すべきほどではない。寛、永、寶字がやや俯し気味に見える。文字の太細が自然で伸びやかに見える。狭穿気味のものが多いと思う。
背星文(背広郭)     【評価 8】
大字に属するものである。背に星があるため判別は容易であるが、無背になった場合は判別が難しい。特徴の少ない標準書体。
背星文(平永)      【評価 8】
小字に属するものだろう。上図に比べて文字が細く、小さくなっている。永柱が短く変化していて違和感がある。寶前足も長く変化している。この手のタイプが無背になると、古寛永の分類は非常に難しくなる。銅色などから水戸銭系であることはある程度推定できるのであとは宏足寛類としたものと照合してゆくことになる。該当するものがなければ改めて背星刮去を疑うことになる。
背星刮去(白銅銭)       【評価 9】
中字に属するもの。非常に整った書体である。白銅質がちょっと珍しい。寶王の幅が狭く小さい。
背星刮去遒勁(白銅銭)    【評価 8】
書風が全く違う。なお、この銭は白銅質であり長門銭の可能性がある。この類の書体は千変万化であり、まとめることが難しい。ただし、文字が離郭気味であることだけは共通である。
 
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16.水戸星文手類

星文手は背星に非常に近い書体でありながら、背星がないもので、早く言えば無所属書体の寄せ集めであり何でもありの感じがします。雑銭のイメージが強く、私もまじめに収集していなかったため、驚いたことに手持ちにまともなものがほとんどありませんでした。絶対的な特徴は文字がはっきり
離郭すること。これで決まりです。水戸銭の宏足寛類や力永類に移行する過程の書体であると考えられるため、どちらつかずの書体も数多くあります。なお、星文手という名称は長門銭の星文手と混同しやすいのですが、長門銭の星文手は背星刮去がベースです。
無星文は背星類に似ていますが、はじめから無背でつくられたものです。一見、分類が難しく感じますが銭径が大きいという絶対的なポイントがあるため分類は容易です。個人的に好きな銭貨ですが、他の水戸銭グループとは別炉ではないかと思っています。

星文手と無星文に大別されます。
 
特徴:星文手 
背星文の中字書体に近いが
離郭の傾向が強く、通字のしんにょうが必ず郭から離れる。本体は寶字の王と尓の関係がややいびつである。寛字が破見寛、寶字が破貝寶であるのが通常。
 
星文手(純白銅銭)     【評価  5】
寛字見画の第1画と第5画、寶字貝画の第1画と第5画が接しないのが特徴である。また、離郭している文字が非常に目立つ。本銭は純白に近い白銅銭。白銅質だが長門銭とは制作に隔たりがある。白銅銭の評価については参考のもの。純白は少ないと思う。本銭は書体に変化が見られる。(寶後足が下がり気味に長い。)宏足寛に移行する過程の変化であると思われる。掲示品の分類上の正式名称は水戸星文手小永である。
星文手勁永           【評価 8】
こちらが一般的な星文手に近いもの。永フ画がやや仰ぎ鋭い感じがする。文字の離郭はさらに強い。ただ、破見、破貝には見えない。もう少し勉強が必要か?それともこれは背星刮去なのかも・・・。
星文手遒勁(白銅質) → 力永低寛降水
永字の幅が非常に広く、力永に似ているのですが、文字が離郭しています。背星刮去遒勁とは文字の大きさが異なります。要するに星文手は寄せ集めだということで何でもあり・・・だということ。約束は文字が離郭するということだけです。
静岡いづみ会編の穴銭入門古寛永の部で力永低寛降永とされていました。なるほど書風からはその通りですね。ただし、背星文と力永の中間体であることには間違いはありませんので今しばらくこの位置に掲示を続けます。
特徴:無星文
濶縁で
銭径が大きい。概ね25㎜を少し超える程度。文字が離郭し、浅背である。材質がやや黒っぽい。
 
無星文(背小郭)     【評価 6】
濶縁であるため文字が小さく感じる。書体は背星の中字あるいは大字に近い。癖が少なく、素直な書体である。何よりも25㎜を超えるサイズは非常に目立つ。無星文は星文手の単なる濶縁銭であるという説があるがはたしていかがなものか?掲示品は背小郭になる変化がある。
静岡いづみ会編の穴銭入門古寛永の部による星文手の説明

文字が離郭しながらも面刔輪されたものを割り当てています。もちろん例外もあると思います。とにかく元はこの類は水戸銭系例外の寄せ集めだと思いますので何が出てきても不思議ではありません。要は分類する側がこの類をどう扱うかにかかっています。寄せ集めでゆくか、それとも対象を絞り込むか・・・です。極めて個人的な意見ですが、星文手という項をあえて設けずに、星文類と統合してしまったほうが良いと思うのです
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17.水戸広永銭

旧水戸銭です。書体に大きな変化がなく、制作も比較的安定して美銭が多いのですがここらあたりから古寛永の書体分類が非常に難しくなってきます。旧水戸銭類は概ね黄褐色のものが多く、絶対的な書体的特長に欠けるのが困りものです。星文類の次に広永を持ってきたのは、その中でも比較的覚えやすい書体だからです。
 
特徴:寛字の足が中央から低く平均的に振り分けられ幅広い。永は昂水気味で平永である。文字は寄郭気味になる。通頭は低く俯し、寶字がわずかに仰ぐ。
 
広永(背濶縁広郭)      【評価 10】
個人的な印象だが広永は文字の配置バランスがなんとなく永字のすその広がりにあわせた感じ(全体的に上がり気味、永字は昂水気味、仰寶、俯通気味)がする。本銭の面は母銭といっても良い作である。ただ、背の出来が気に入らない。この点は母銭鑑定に詳しい諸賢のご意見を頂きたいものである。
広永背異          【評価 8】
広永背異と一応分類しているが、実のところ私自身が完全に納得できていない。(長門銭でも良いのではないか?)これも分類上中途半端にならざるを得ない銭貨の運命なのかもしれない。
長門銭と同じ背の形状でありながら銅質が長門銭であると言い切れない状態のものがこれになるのか?長門銭の背郭であるのに銅質が今ひとつのものを指すのか?
広永様(長門銭)
長門銭らしいものを参考掲示します。その差が分かりますか?
広永様背反郭(長門銭)
銅質はどう見ても長門銭で問題なし。ただし背郭の形状が長門銭とは全く異なります。それでも私は長門銭と判断しています。この銅質は水戸銭ではないと感じるからです。(間違っているかもしれません。)
これを見ていると長門銭の勁文と広永は同じ書体を手本銭にしているように思えてなりません。

→ 長門銭勁文
広永(背異?)
うーん、こいつは微妙だなぁ。ちょっと白味がかった銅色だし、背輪の歪みも気になる。郭だって問題ない。でもすべてが中途半端。こういうのを広永背異とするのかも・・・。でも広永にはこのような中途半端者が実に多いと思う。広永背異とはその逃げ口の分類かもしれません。
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18.水戸力永銭

その存在量の多さからかなり大きな銭座であることが推定されます。文字が雄大であり気持ちの良い筆勢です。どちらかといえば雑銭なのですが縮通などちょっと少ないものもあります。勇文については書風が少し力永に似ているため、この類に含めましたが文字が小さく力永縮字といった感があります。なお、勇文は広永とも書風が近いため、あえて力永の項の冒頭を飾らせることにしました。
 
特徴:力永と広永の中間書体。文字は細いが力感ある。通頭、永フ画など文字全体が俯し気味。やや濶縁。
 
勇文            【評価 7】
特徴があるようで目立たない存在。ただ、書体変化がほとんどなくこれ一手なので、書風を頭にたたきこむしかないと思う。書風は似ているが広永とは寛足の形状が全く異なる。文字も全体的に俯しがちである。銅色はやや暗い色調のものが多いような気がする。力永にも書風が似ている。
 

特徴:文字大きくやや細字で永字の字画が反り返る。文字は寄郭。

 
力永高寛          【評価 8】
力永は高寛と低寛に大別される。旧名は反柱永。文字大きく特に永字が幅広く字画が反り返るのが特徴だが、星文手などに非常に似ているものが多いため、選別には注意が必要である。刔輪のためか、文字の位置が郭に寄っている。以下に非常に良く似ているものを掲示する。これらはいずれも力永のモデルあるいは力永に移行する過程で生まれたのではないかと推定されています。
力永低寛削辵        【評価 8】
高寛に比べ、俯柱永気味であり、かつ名前の通り寛足が低い。寛後足の形状がカギ状に方折する。力永は小変化が多く、本銭は通字のしんにょうがわずかに削られて離郭している削辵という変種で少ないが本銭の評価はせいぜい8どまり。
力永低寛縮通          【評価 2】
力永の削字縮字である。銀座コインオークションで美銭を入手できたので画像を更新した。通字が特になさけなく縮む。
 
 
そっくりさん集合! 1 (離郭系)
 
水戸銭背星刮去遒勁 水戸銭星文手遒勁 長門銭星文様 長門銭星文様遒勁
 
水戸銭背星刮去遒勁
長門銭のベースになったと思われるもの。

水戸銭星文手遒勁
力永や背星刮去遒勁に似ていますが、力永は文字寄郭であり、背星刮去遒勁より文字が少し大きくなっています。永字に力感はありますが、力永のような字画のうねりはありません。ただし掲示品はやや白銅質で、長門銭の可能性もある銭貨です。
※その後の資料収集で本銭は力永低寛降永ともされることになりました。ただし、前述の通り星文手の形質も持ち合わせている上に、銅質も若干異なるような気がします。今後類品を集めて検証したいと思います。

長門銭星文様
文字がべったりと太く、力永のような文字の反りや勢いがありません。文字配置はやはり離郭になっています。背星刮去の大字あるいは背星刮去遒勁がベースになっているようです。

長門銭星文様遒勁
星刮去遒勁からの生まれとされます。星刮去遒勁様が正しいのに銭譜では星文様遒勁という名になります。これは水戸星文手遒勁という銭貨と非常に紛らわしく困ります。書体変化が著しく、永字が跳永気味になっています。星文手遒勁からの移行という可能性も否定できないと思います。なお、掲示品は直足寛と分類される書体です。
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