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13.長門銭

長門銭については毛利家に手本銭として銭貨が残されていたこと、鋳地赤村の発掘調査が行われたことなどから、その全体像が不完全ながら確認できています。異永、奇永などのオリジナル書体のものの他に、俯永や星文様、太細など他の地域と共通の書体も鋳造されたという事実が判明しているのです。
幸い、手本銭として残されたものは皆共通した金質、制作上の特徴があり、これによって長門銭の分類が可能になりました。判別にはある程度の慣れが必要ですが、これを習得しないと古寛永の分類はできないといっても過言ではありません。最近、手本銭が市場に流出しており、コレクターとしてはありがたいのですが、貴重な歴史資料が散逸してしまうことに懸念を禁じえません。とはいえ、長門銭こそ数多くの現物を見て目を鍛えない限り道は開けません。現在が長門銭の良い品をたくさん見て覚える絶好の機会であることもまた事実です。
オリジナル書体のうち異永は誰にも判る非常に奇抜な書体で、古寛永を集めはじめのときに真っ先に手に入れたい銭貨です。また、その他の銭貨も白銅質の美しいものが多く、私もすぐにそのとりこになってしまいました。長門銭によって古寛永の魅力を知り、書体と金質、制作の変化を教えてもらったといっても過言ではありません。古寛永は背を見ろ・・・これが長門銭分類の秘訣です。

異永 奇永 麗書 裕字 勁文 などのオリジナル書体と

他座を写した 
俯永様 太細様 正字様 星文様 広永様 などの書体があります。 

特徴:灰白色、濁青白色あるいは黄白色の金質。文字や輪に加刀多く、背郭が丸くいびつになることが多い。背の彫りが深く、通用銭は深さが一定ではなく輪や郭に近づくほど浅くなる傾向がある。

異永(短尾寛手本銭)     【評価 1】
いわゆる毛利家手本銭と言われるタイプの銭貨である。通用銭よりも立派な仕立てだが母銭としての仕上げはされていないもの。未使用であるため、銭全体が粉を吹いたように白くなっている。これは平面部分の磨耗が生じていないためだと思う。手本銭の背郭はいびつになっていないものがほとんどである。異永の名称は永字の形状を見ればすぐ判る。掲示品は寛尾の跳ねが短くなるタイプで通字のちゃく頭が俯して狭い。
奇永(垂寛手本銭)      【評価 1】
奇永は名称どおりの奇抜な書体ではない。奇永の書体的な特徴は通字と寶字の形状にあり、通頭としんにょうが大きく、しんにょうと用画の間が広く空き、寶冠が鍋蓋をかぶせたように浮いている。また、寶字の王画と尓画の部分が大きい。銅色は淡褐色〜灰白色で、変色して真っ黒になるものも多い。本銭は寛冠の前垂れが外側に開かない特殊なもの。寶冠のうねりも大きい。
麗書(手本銭)       【評価 3】
麗書の名称が示すようにやや細めの整った書体である。 水戸星文手や水戸正字銭などに似ているが、文字配置は郭や輪に寄ることなく比較的均一である。また、永尾は直線的にすっと伸びる。次掲の裕字に似ているが麗書はどちらかといえば俯柱永である。
裕字(凹点永手本銭)    【評価 3】
裕字という名称は、優しい書体ということなのだろうが少し判りづらいと思う。書風は麗書とほとんど変わらず、永柱が仰ぐところが一番の相違である。麗書仰永でも良いと思う。凹点永は永点が半分削られて陰起するもの。
勁文(削字離用通手本銭)  【評価 3】
勁文は非常に特徴のある書体だが、削字変化が特に多い銭貨でもある。特徴は永字が昂水気味で寛後足が方折すること。通点が大きいのも目立つ。また、4文字とも刔輪によって隔輪気味である。勁文の名の通り、筆勢はあるがどこかぎこちない。離用通は通字用画の縦画が短く、しんにょうから離れるもの。
俯永様(手本銭)      【評価 4】
俯永は岡山銭とされている。長門銭は他地域の銭文もよく採用している。あるいは同じ書体が全国各地で使用されていたのかもしれない。削字変化が非常に多いのだが、判定はあくまでも銅質と制作で判断しなければならない。当然ながら中間体的なものもある。判断ポイントはやはり銅質と背の制作である。
書体についての特徴は岡山銭の説明を参照にして頂きたい。
太細様(通用銭)      【評価 7】
旧松本銭の太細の書体をそのまま使用しているもの。永字が平べったく縦画のみ太い。書体についての詳細特徴は太細銭の項を参照して下さい。
正字様(通用銭)      【評価 7】
旧水戸銭の正字の書体をそのまま使用しているもの。比較的癖の少ない書体であるがやや寄郭している。書体についての詳細特徴は水戸正字銭の項を参照して下さい。

※本銭は俯二寛(泉志では陰目寛)からの襲用と思われる。仰二寛は小王寶で王画と寶貝が離れる。俯二寛と本体との差異は微妙ではたしてここまで細かく分類する意義があるのか・・・。
星文様(通用銭)      【評価 5】
背星刮去を写したものと思われるもの。長門銭特有の背である。このような銭貨が生まれるには、深背気味の母銭を粘度の高い銭笵に押し付けた結果であると推定する。長門銭の背輪、背郭の乱れは制作技術上の問題であって、母銭自体がこのようになっているわけではないと思う。
← これが長門銭 特有の背です!
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広永様(通用銭)      【評価 6】
旧水戸銭の広永の書体をそのまま長門銭に流用したもの。中間的なもの(広永背異)の存在から、長門鋳であることを疑問視する向きもあったが、最近谷巧二氏の発表によって播磨古銭会の高見昌幸氏所蔵の母銭の紹介がされている。永字両端が浮き上がり幅広い。書体特徴は水戸広銭様の項を参照頂きたい。
長門広永様(母銭)谷巧二 著 寛永通宝銭譜古寛永之部上巻
(勝手に記事を転載してしまいました。お許し下さい。)
余話泉談とともにご送付頂きました。この文献には長門銭についての詳細分類が豊富な拓図とともに紹介されています。入手するには書信館出版にお問い合わせ下さい。
 
長門銭の断面図(収集88年5月号より転載)
長門銭の形状をよく現しています、すべての長門銭が当てはまるわけではありませんが、重要な判断材料のひとつです。谷の形状が谷の中央部ほど深くなる傾向にあることが特徴です。背郭が丸みを帯びるのも特色で、加刀による痕跡が残ることもよく見られます。ただし、上掲の手本銭類などにはこの特徴はあまり見られません。
 
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