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4.信濃松本銭 寛永14年信濃国松本 鋳造

この銭貨については鋳銭関係者が伝承として現物を残しており、鋳造地がほぼ確定しています。ただし、従来は松本銭といえば太細類とされていてイメージが定着してしまっています。そこで混同を避けるため、地名の前に国名を冠することにしました。
新しく信濃松本銭として出直すことになったのは、旧竹田銭であり書体的には斜寶と呼ばれる一群です。書体は独特で慣れれば選出には迷うことはないでしょう。なお、本銭群には錫母銭の存在が知られています。
※旧称の竹田は『たけだ:TAKEDA』ではなく『たけた:TAKETA』とにごらない発音だそうです。知ってました?

基本書体は 
斜寶 です。
 
特徴:永字が扁平で寶字が仰ぐ。(大きな書体変化はない)
斜寶大様(含白銅質)    【評価 6】
外径25.4oの大様銭。斜寶の場合25o前後が大様との境目だと思う。背広郭気味のものが多く、掲示品もやや広郭だがもっと郭の大きいものも存在する。
斜寶背広郭         【評価 7】
背郭が広くなっているもの。これだけ広がっていると目立ちます。
斜寶大様(最大様)            【評価 4】
掲示品の外径は25.9oあり、通用銭としては特殊なものを除き最大様である。この大きさは母銭級であり少ないと思う。信濃松本銭は外径25o以上から大様銭として評価良いと思う。願わくばあと0.1o大きければ・・・と、思います。
斜寶細縁                       【評価 6】
撮影前の計測により内径が20.15oあることが判り、斜寶細縁銭は通常銭(内径は19.7o前後)より内径、銭文が大きいことが判明した。計測による分類の重要性を改めて感じた次第である。
ただし、どこからを細縁とすべきかの境については、改めて議論が必要だと思う。
斜寶深冠                 【評価 9】
寛冠の前垂れが長い。存在はこの銭類では最多。
斜寶失点尓                【評価 4】
寶尓の後点が失われている。背広郭になる癖がある。なお、信濃松本銭は背郭に大小変化がある以外は比較的書体変化が少ない安定した銭貨群である。
斜寶高寛                 【評価 6】
わずかに高足寛になる。寶貝は短く仰ぐ度合いが強くなる。寛足の分岐点がやや右側に寄り、前足が郭に接するように伸びてくることも高寛に見える要因である。大様の通用銭はないとされているので、だれか発見して下さい。
斜寶縮寶          【評価 4】
文字通りの縮寶。短寶としても差し支えないものである。よく観察すると本体系に比べて刔輪の度合いが少しだけ強い。
斜寶縮寶(刔輪)
縮寶の類は寶字の仰ぐ度合いが強いことに加え、輪が内側から削られて文字との間が広くなる特徴があります。その最たるものが縮寶刔輪で、非常に珍しい変化です。この他にも寶後足が短くなる跛寶という変化もありやはり少ない。

収集平成15年7月誌上入札より → 奇品館
 
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5.高田銭

高田銭については従来、肥永系の文字のものと笹手永系のものが同種とされていました。ところが分類作業をするに当たっては笹手永系のものと芝銭の不草点との判別が難しく、また、制作面からも笹手永系のものは不草点からの変化という説があり、必ずしも同類とは判断できないため今一度分離し、肥永系と縮通だけを独立させることにしました。
なお、笹手永系のものには肥永系と同じように背の浅深という制作の類似性があると言います。私が見る限りこの点の判断はできないのですが、背輪の成形が下手ででこぼこした作が多いことなど、制作面では不草点よりやはり高田銭に近いような気がします。この点が明確に解明できれば笹手永系の一部(笹手永手以外)を高田銭に戻したいと思います。

主な種類に 
肥永 肥永小字 肥永降寶 縮通 があります。 → 笹手永銭

特徴:永字のノ画の打ち込みが独特。永の払いが浮き上がり、やや退永になる。通字はやや前のめり。
肥永            【評価 2】
永字に特徴がある。また通字が猫背気味になる。非常に古さを感じるぼってっとした書体であり、高田銭の初期銭であると思われる。どちらかといえば珍銭である。
肥永小字             【評価 6】
書風は若干異なるが、上掲のものと同じ系統の書体であることはすぐ判ると思う。肥永の類は必ず背小郭になるのが特色。高田銭は背に深浅があり、掲示品は深背である。
肥永降寶          【評価 8】
永字については非常に良く似ているが、通字は猫背にならない。寶字冠が郭の下にあるのも特徴である。背が小郭であること、背地のでこぼこした感覚・・・が高田銭の特徴でもある。通字の形状は笹手永系のものと書体上の類似性があり、やや小さく前のめりに見える。削字変化で細字になったものもあるようだ。
縮通            【評価 9】
書体が類似しているのと、分類が容易なため高田銭にしているが、個人的には別炉だと感じている。上掲のものに比べ背輪の幅広く広郭になる。掲示品は最大様の美銭である。外径24.4o、内径19.6o。
縮通小様                 【評価 10】
上掲銭の次鋳小様銭と思われる。外径23.1o内径18.9o。しんにょうにうねりのあるものがあり、おそらく【えんちゃく】と言うと思うが、ワープロで変換できない。現代に合わせ用語変更ができないものかと思う。

※蜒という文字でした。音もエンあるいはタンでしたので訂正します。
縮通覆輪                       【評価 3】
鋳写しを重ねて小さくなったものに覆輪して銭径を大きくしたもの。文字はかなり小さくなっているのが判る。外径24.0o。内径18.3o。存在は非常に少ない。
参考 笹手永
この笹手永は高田銭で良いと思いますが、笹手永手なるやっかいものが存在するため、この仲間は不草点類に一時引越しをさせておきます。書体全体がぎこちなく、永字のノ画が力強く打ち込まれることに加え、通字のしんにょうの形が独特(下部が直線的で前のめり風)です。また、寛冠の前垂れが開く癖があります。類品に笹手永仰頭通とその削字変化したもの、笹手永退寛類などがあります。従来から同類とされた笹手永手は別系統だと思います。詳細は不草点類に掲示しました。

→ 不草点類
 
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6.坂本銭

坂本銭については永字の形が独特な跳永系と、これといった特徴に乏しい高頭通系の2グループで以前は構成されていました。このうち跳永系については不跳永もあるものの永字、通字に特徴があり、判別は容易です。一方、高頭通系の書体は類似銭が多く、非常に判定が難しい銭種です。高頭通系が坂本銭とされた理由は制作、銅質に近似点があるという点ですが、絶対的な分類特徴にはなっていません。したがって跳永系と高頭通系をもう一度分離して、分類しやすいものを改めて坂本銭としなおすことにします。なお、背星の類は坂本銭である・・・という伝承が厳に存在します。このことは真摯に受け止める必要があると思われ、坂本の名称があくまでも仮の命名であることを感じて頂きたいと思います。また、先日までこの項に正永類を入れていましたが、やはり分類上紛らわしいために不草点類に異動させました。

跳永 不跳永 に分類されます。
 特徴:永頭(通頭)に爪(反り)がある。銅色は灰茶〜黒褐色が多い。
跳永(背広郭)         【評価 8】
永頭に爪と永フ画先端に跳ねがある。背郭は鋳ずれによる変化だと思われる。この書体で面背大濶縁になるものが存在するが、大珍品で古来から有名品である。

→ 秘宝館 坂本銭大濶縁の類
不跳永                  【評価 8】
永フ画先端に跳ねは削られているが、永頭の爪などはそのままである。
跳永大濶縁         【評価 大珍】
跳永の縮字濶縁銭。古来からの超有名品であり、絶対的な珍品である。市場に現れることは滅多にない。

(平成17年オークション・ネットXより)
参考 正永 と 高頭通(小点尓濶縁)

このうち正永は坂本銭に間違いないと思います。高頭通も書体は非常に近似していますが、個人的には同炉とするには違和感を覚えます。いずれも書体的に決め手に欠け紛らわしいため移動しました。これらの銭貨は四草点との関連性もあると思われます。
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