戻る     進む  
36.下田管内刻印銭 の類 明治4年(1871年)伊豆国下田町会所にて製造
明治時代に入り、貨幣制度が変わっても寛永通宝は流通を続けました。ところが新しい貨幣の円との交換レートを定めるにあたって、交換価値が地金相場に準じて何度か改められたため、これらの貨幣を多く所有する庶民は大変困ったようです。そこで下田の住民が密かに集まり、地区内での流通価値を自分達で定めて従来どおりに流通させたと言われます。
そして他地区から流入する貨幣と区別するために地元の銭貨には下田の刻印を打った・・・ようです。さて、以下に掲示する下田刻印銭ですが、残念ながら真贋の区別が私にはできません。とくに上段の2品は古い贋作の可能性があります。刻印銭は贋造が容易なので、コレクター目当ての贋作が横行したようです。贋作を見分けるポイントは2つで、ひとつは【タ】刻印の形状と、流通をしたことから刻印の裏側に流通による磨耗があることです。古い贋作の場合、真贋判定は非常に難しく、意見が分かれることもあります。収集するときはだまされることを覚悟の上入手されるか、それが嫌なら手を出さないことをお勧めします。
【下田管内刻印銭】
【評価 1】 【評価 2】
21波下田管内刻印銭
現品確認をせず郵便入札で入手したもの。贋作だとしてもよくできている。下の刻印は右掲示のものと同一である。タ刻印の下辺に切れがなく、第3画の末尾が角ばるのが非常に怪しい。評価は真品であったときのもの。
正字下田管内刻印銭
実はネットオークションで落としたもの。2枚組で4700円也。大ス穴はあるもののかえって本物らしい?本物でなくてもだめでもともとです。
※古いウブ挿しから出た品だそうで本物らしいです。
【評価 2】        【評価 2】
小字下田管内刻印銭
古銭商から入手したもの。上掲示品とタ刻印の形状が異なる。タ刻印の囲みの下部が丸く太く、一部が切れる。
俯永下田管内刻印銭
入札で入手したもの。これもまた刻印の形状が微妙に違う。流通の形跡はあるので一番まともか?
4品のうちひとつくらいは真品があるだろうか?

新寛永拓影集から
タ刻印の拡大図
左上:下部に切れ目がないようにも見えるが打ち傷変化かもしれない。
右上:斜め画が太くざん切りか?
左下:なんとも言えないが、悪くもなさそう。
右下:細字で四角が幅広いがポイントはすべておさえている

【評価 1】 贋造刻印
文字がベタッとしていて、切れがありません。贋造ポイントもいくつか符合しています。決定的なのは刻印が新しいこと。古い刻印なら底に垢がたまっています。
正字下田管内刻印銭
これも郵便入札で入手したもの。タ刻印がないのは現品が届いてから気づいた。問い合わせに対し贋作ではないとの返事。かなり有名な古銭商だったので信用したが、後の祭りか?
37.踏潰銭 の類 
これは完全な密鋳銭で、東北地方を中心にかなりの数量が存在しています。その独特の風貌から【ふみつぶし】の名称で呼ばれており、悪名称であるという指摘もありますが、愛称として定着しています。踏潰特有の風貌を生み出すのはその独特の制作法によるもので、通用銭を上から叩いて広げる延展法を行うことによって、鋳造後に銭型が小さくなることを防いでいるそうです。文字や背の波がつぶれて乱れること、外輪がいびつになること、銭径の割りに肉薄になる傾向があることなどはすべてこの製法に由来していると考えられます。銭面全体に粗めのやすりがかかっており、地の部分がざらついているなど共通の特徴があります。大型のものなどは延展法によってできたものを元に母銭を新規におこしたものかもしれず、肉厚なものも見られます。書体も面白く、人気のある一群です。
【密鋳 踏潰銭】
正永(背削輪)          【評価3】
比較的整った書体であり、永フ画は気持ち仰ぐ。寶冠の跳ねは削られず残るのが広永との違い。背削輪は背の内径が大きくなるというが、鋳ずれなどで判りづらい。背左下の波の角度が浅くなること、全体的に細字になり、寛足の内跳ね傾向が強い事が本体と違うようだ。
→ 踏潰様背盛
→ 密鋳銭踏潰様
小点永背刔輪           【評価 3】
寛冠前垂れ、寛爪、寛跳ね、永点、寶足が小さく変化している。背の上部の波と輪の空間が刔輪によって広がっているタイプ。平均外径28oほど。踏潰銭は銭径がいびつのものが多く、この銭の縦径は28.25oある。
広永                    【評価 3】
寛冠前垂れ、寛爪、寛末画の跳ねが長い。通のしんにょうの頭が仰ぐ。通頭低く寶冠の後垂れが欠如する。書体としては整っている。外径28.15o。

※最近まで正永と間違えていました。訂正します。正永はもっと通頭が大きくなるようです。
広永(最大様)      【評価 少】
外径29.35〜29.7oほどあり、踏潰銭としてはチャンピオンクラスの大きさです。書体はありふれていますが、とにかく大きいことは良いことです。

内径19.6o 肉厚1.15o 重量5.3g

※あるいは圧延銭か?
広永(母銭)
ハドソン社の東北・北海道の貨幣に掲載された広永の母銭(誌上では濶永の名前で掲載。)
画像は面背内径はほぼ同じに揃えてあります。母銭の方の広穿ぶりが目立ちます。永下輪の傷から見て、どうも兄弟銭のような雰囲気です。実物の内径値を知りたいところ。

(東北・北海道の貨幣より画像借用)
狭永                    【評価 5】
永字のフ画が柱に近く大きく、窮屈な印象を受ける。しんにょうの頭が仰ぐ独特の形。通頭はやや俯す。
俯柱永(大様)          【評価 3】
元になったのは明和期俯永であろうが、永フ画が大きく、永柱が左に傾いている。掲示品は外径28.7oで通常のものに比べかなりの大型肉厚銭である。
俯頭通             【評価 2】
通頭が急角度で俯す。広目寛で寛尾がやや長い。狭永に近似するが永字が正永に近い。
濶永(大様)       【評価 2】
濶永は踏潰銭の中ではありふれた書体だが、これだけ大ぶりなのは珍しいと思う。寛永間で28.2o、通寶間で28oほどある。
入門に母銭の古拓本が掲載されているが、大きさ的には近いものがある。
濶永(次鋳)               【評価 4】
踏潰銭の代表的な書体。削字と刔輪を繰り返しているうちに、奇妙な書体に変化したものと推定される。掲示品は次鋳と言われるもので、ひとまわり小さい。存在は踏潰銭では最多である。
俯永手         【評価 1】
永フ画が長く仰ぐが、基本的には俯永の書体がベースになっているもの。
穴銭入門などには俯永の直写しで背波の乱れはないと書いてあるが、延展による乱れはあると思う。本品は平成19年の江戸コインオークションの落札品。
府永手         【評価 1】
外周の変形ぶりが、上の画像によく似ている。背の波は細く鋳だされています。
こちらはインターネット落札品。
永字は府柱永に似ているが寶字は明和期の府永に似ている。寶前足が長く、バランスが悪く前に進む感じ。
小字写(小字手)    【評価 1】
これは掘り出しものです。入札に1500円で出品されていました。2600円で落札。やすり目やいびつな銭形、乱れた背波、やや仰ぎ気味のフ画など踏潰としての条件は充分です。銭の地の感じも良し。ただし小字手とするには永字の乱れが今ひとつでしょうか?銭譜との正合性はともかく、ほぼ間違いなく踏潰銭といえるものに出会えました。

※精査の結果郭内の仕上げが踏潰よりしっかりしていますが、間違いなく小字手です。
小字写          【評価 3】
雰囲気的には踏潰でしかありえない作風ですが、さらに野性味を感じさせる一枚です。とくに輪側面の仕上げの雑さは光ってます。

※これは良い感じながら決定打はありません。
小字写         【評価 3】
秋田のH山氏の見立て。こうやって並べてみるとかなり大きいが上の銭に雰囲気がとても似ています。
踏潰様小字再延展写   【評価 3】
背波の乱れ、やすり目、銅質は合格。ただし、広がった郭と極端な薄肉と切り取られたようにごつごつした側面に違和感を覚えを踏潰としませんでしたが、私の中で75%は踏潰銭です。

※踏潰様広穿歪形として別項で紹介しています。
踏潰様正字写      【評価 3】
製作は上下の画像のミックスという感じで銅質と風貌はOKです。ただ、背は大きくずれているものの延展の雰囲気はありません。細かい違いはともかく、同じ炉の系統では間違いないところ。踏潰度は65%ぐらいかしら?
踏潰様正字写(歪形)   【評価 3】
踏み潰しというより踏みにじられていてよれよれになっています。ここまで変形が激しいとはたしてちゃんと流通したかどうか不安になってしまいますね。
小字写          【評価 3】
こちらは正統派ですけど背の彫が深い。しかし、こいつはなかなか良い顔をしています。
踏潰様小字写狭穿     【評価 3】
銭形や背波の乱れ、銅質は踏潰銭として合格!銭径が小さく面背が細密な砥石仕上げになっているので踏潰銭としなかったものですが、踏潰銭としても80%くらい良いかな・・・と、思っています。永フ画も少し仰いでいます。狭穿ぶりもなかなかの味。

※踏潰様として別項で紹介しています。これはなかなか良いもの。
踏潰様小字写       【評価 5】
銅質などから上掲のものと同系統と考えています。やはり面背のやすり目が気に入らないのです。踏潰度は前のものに比べるとかなり低くなり45%くらい。

※背歪輪歪波として別項で紹介しています。
俯柱永の再延展銭         【評価 少?】
練馬雑銭の会で紹介されていた踏潰の鋳写銭の原品です。見た目以上に大きく、直径は28.5o以上あります。前の持ち主は江刺銭であると分類したようですが、やはり踏潰の再延展写とした方が良いと思われます。かなりの薄肉銭で制作は劣りますが、銅質に本炉との違和感は少なく、分類判断にはまだ比較研究が必要だと思います。購入価格は私にはとてつもなく高かった・・・のですが、この評価があっているかどうかは今は分かりません。後悔?そんなものしてたらこの趣味はできませんよ。
踏潰の鋳写鉄銭(練馬雑銭の会:公開盆回し出品)
密鋳銅銭から生まれた密鋳鉄銭ということで、これは紛れもない珍品です。上の銅銭の場合は、たまたま制作が粗くなっただけのもの・・・と、いう可能性も捨て切れませんが、この書体の鉄銭は密鋳銭に間違いないものです。したがって出品価格もこちらの方が高くなっていました。同類の存在は日本に数品しかないようで、入手できれば自慢の逸品間違いなしなのですが、上の品を入手したために予算がなくなってしまいました。
書体は画像から判断すると狭永か俯柱永の可能性が高いようですがはっきりしません。本来は秘宝館入りすべきものですね。

※以下のものについては、判断される方によっては踏潰銭ではないとされると思います。
いずれも制作方法や銅質、やすり目などに共通性があり、踏潰銭の鋳造技術の流れを汲む系統であると思われます。参考にして下さい。
 
小字写(直鋳延展)          【評価 3】
明和期小字から鋳写されたもの。背波の乱れ、歪んだ外輪、粗いやすり目などの観点から踏潰銭と判断されたものである。

※非常に薄肉で上掲のオリジナル系書体のものの肉厚な制作とは径庭があるようにも思えますが、金質ややすり目に類似性があり、とりあえず前所有者の説に従いました。
踏潰様小字写輪斜めやすり【評価 3】
黄銅質で面背のやすり目などは踏潰銭としては合格の範囲です。ただし、銭径が縮小気味なことと輪側面の仕上げが斜めの強いやすり目で、通常の踏潰銭とは異なります。
踏潰度30%だと思います。

→ 背盛江刺様

→ 南部藩写しのバラエティ
踏潰様正字写輪斜めやすり【評価3】
銅質はやや違いますが、上の小字と完全に同炉銭だと思われます。やすり目はものすごく粗いものの、がっちりしたつくりで肉厚です。
延展ぽく見えますが、違和感も強く、やはり踏潰度30%といったところ。
踏潰様正字写       【評価 3】
これは入札で落とせなかったものなので断定はできませんが踏潰銭の特徴がよく出ています。(画像の色調はやや青黄色くでているようです。)平成18年秋のオークションネットの入札誌に出品されたもの。他にも味のある品がたくさんありましたがこれはとくによい顔をしています。(下見をしたわけではありませんが・・・)

(オークションネットの入札誌(五)より)
※上記銭と同炉でしょうか?
小字写?(直鋳)        【評価 ?】
踏潰系というふれこみである入札誌で購入してしまったもの。たしかに上図のものの延展前といえばそうなのかもしれない。ただ、確証はありません。

※銅質、製作は良く似ています。
踏潰?浄法寺?俯永写  【評価 5】
銅質はやや赤く浄法寺的なのですがやすり目や延展の制作には踏潰的な面が見えるもの。ここらへんの分類は微妙です。浄法寺系で良いのかなぁ?・・・と思います。
踏潰?小字写延展銭  【評価 不明】
画像では浄法寺系のような赤みのある銅色ですが現品を目視すると安政期のような黒ずんだ黄褐色で、全く赤みが感じられません。延展は後天的なもので銭を叩いた感じが手に触れるとすぐに判ります。問題はいつの時代での延展かというところですが、すべすべした肌は新しさという不安要素をかき立てます。ただし土台は間違いなく密鋳銭です。
※見た目と画像が違うのはなぜか・・・?
細かい擦り傷が銭面で乱反射しているからではないでしょうかね。
小字写           【評価 4】
入札誌で落手したもの。やや肉厚だがやすり目、銅質は踏潰系で間違いないようだ。

※穿内仕上げが違うので・・・。
参考画像:踏潰様小字写延展
(練馬雑銭の会公開掲示版から)
踏潰銭の親戚・・・とのこと。私の言う踏潰系と同義で制作などに一部共通性は認められるものの小異の感じられるもの。画像からの予想になりますが延展技法は見られますが、やすり目があまりなく砥石仕上げ風の滑らか肌に見えます。
仰寶(踏潰様)
細かい仕上げ荒砥石の目?が面背に残るもの。輪周囲は不正形気味であり、穿内は未仕上げ。
延展こそ確認できませんが、まるで踏潰銭の銅質です。
参考)密鋳一文銭
郭抜けの加治木か天下手祥符のような風貌ですが、制作的には延展系でやすり目は踏潰のような感じ。あくまでも感じなのですけど・・・。
 
 投稿画像 東北のS氏から  
【踏潰のバラエティ】
 
俯頭通
東北地方在住のS氏からの投稿画像(感謝!)
新寛永通寶図会での俯頭通だが、S氏は永字の形状に注目して『長永』としているそうだ。大型でなかなかの美銭である。
俯頭通の鋳写銅銭
これもS氏からの投稿画像(感謝!)
画像では赤くなっているが実物はもう少し黒っぽいとのこと。ただでさえ少ないものなのにその写しとはかなりの珍品である。
なお、S氏によると踏潰銭の珍品の画像は以下のHPで見られるそうです。
→ オレンジねこのホームページ
→ 私の藩札分類研究
小点永(陰起文)鋳浚改造母銭
一見なんのへんてつもない、小点永のようですが、文字や輪に加刀痕があり、通用銭を改造した母銭であるようです。背波が極細になっています。
俯柱永(俯寛)の鋳浚改造母銭
こちらは俯柱永の改造母銭。大型で銅色や制作の異なる踏潰銭についてやりとりをしているうちにS氏本人がこれが通常の品と異なることに気づかれたようです。これにも鋳ざらい痕があるそうです。
戻る 次のページへ
     
新寛永通寶分類譜 古寛永基礎分類譜 赤錆の館
天保銭の小部屋 文久永寶の細道