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【文政期 11波の類】
俯永         【評価 9】
文政期の俯永は明和期のものと書体的には変わらない。もともと俯永は背波が細くなる傾向があるが文政期俯永は特に背波が細くなる感じがある。


※掲示品は28.45oの大型銭。
俯永小頭通      【評価 8】
画像では判りづらいが通頭の右下辺が欠けており小さくなる。変化については一定していないようである。

俯永濶縁(次鋳)   【評価 3】
内径、文字とも小さい・・・いわゆる濶縁縮字銭である。とはいえ内径20.5oは通常銭と0.3〜0.4oしか変わらない。通常銭との差異は目視での判別は難しいところ。外径28o。

※たしかにこの品の内径は20.5oだが、仕上げの押しの関係もありちょっと疑問があります。納得のゆく品が現れたら交換します。
離用通        【評価 5】
明和期と同じ書体。掲示品は未使用のやや大様銭。下のものとの輪幅の差は歴然としています。内径は21o以上あります。
外径28.4o
離用通(次鋳)    【評価 6】
離用通で内径が少し小さいもの。存在は本体より多い。内径20.7o。
離用通次鋳(異銅厚肉) 【評価 6】
掲示品は銅色が白みを帯びていてで、肉厚も通常銭の1.5倍ほどある。制作がおもしろいので拾っていたもの。
濶縁銭だと思っていたが計測違い、勘違いでした。
重量7.7g
離用通大様銭(参考)
外径28.55o 内径21.15o
背内径21.50o 厚さ1.30o
東北のS氏からの投稿画像です。やや圧延の気はあるものの大型のサイズのもの。
離用通面刔輪背削波   【評価 少】
明和期では大珍品であった離用通面刔輪背削波は文政期ではなんとか実見できる存在になる。それでも希少品であることには変わりない。文字と輪の間がわずかに広がっている。寛冠と輪の関係を観察していただきたい。
大頭通         【評価 3】
明和期と同じ書体。明和期の場合、離用通の方が少なく大頭通はありふれているが、文政期の場合は大頭通の方が希少である。
大頭通(欠足寛)    【評価 3】
寛前足が陰起するほか、寶尓に鋳だまりがあります。また、永フ画の下に小さな輪欠損があるようです。存在はかなり少なく評価はワンランクアップでも良いかもしれない。
なお、掲示品は未使用銭でやややすり目が粗い。明治期吹増の手にも見えるが側面仕上げが若干異なるのでここに掲示する。
 
 
33.安政期 11波 の類 安政4年(1857年)江戸深川千田新田 鋳造
この一群はやすりがけに特徴があり、輪側は銭面に平行にろくろ仕上げにより平滑に磨かれており、机の上に立つほど角がきっちりしています。また、穿内にもやすり仕上げが見られ、文政期の仕上げとは雲泥の差があります。銅色は黒褐色が多いのですが稀に真鍮色をしたものもあります。
 
【安政期 11波の類】
小字(背濶縁)                【評価 3】
これが本体銭。輪側面は角が立つようなきれいな仕上げ。背内径は20o以下になる。とくに向かって左側の幅が狭いのが判りやすい。永ノ画には打ち込み(爪)がある。

※雑銭に過ぎないのですがなかなか見つかりません。これはお店での拾い出しです。ちょっと真鍮質気味です。
小字(背削輪左一直波)        【評価 5】
左下の波が直線的に変化している。背は上図より刔輪されているがやや濶縁で波で囲まれる左右の三角形の大きさで判定するのが分かりやすい。変化としては地味だが、少ない存在である。これより濶縁になるもの、再刔輪されたものも存在するようで、さらに少ない。削輪はいびつで背輪の縦径が横径より長いようである。
小字(背再削輪左一直波)   【評価 1】
背の刔輪が著しく、かつ左下の波が一直波になったもの。雑銭風だが非常にまれな存在です。
小字(背削輪)            【評価 9】
安政期の特徴は、銭を横から見ればすぐに分かる。すなわちきっちり角が立つような仕上げで、穿内の鋳張りはやすりで除去されている。型ずれによる錯笵も文政期に比べて格段に少ない。削輪銭が通常見られるもので背の内径はおおむね21o前後である。

小字(背削輪左第三直波)       【評価 3】
左の上から2番目の波が直線状に変化しているもの。存在は稀であるがその差はわずか。図会の評価は5万円という驚愕の値だが実質はどうだろうか?
小字無爪永背刔輪(大様)       【評価 9】
永字の右打ち込みの先端に爪がないもの。中間的なものもあるので一手とするべきでないかもしれないが、参考までに掲示した。なお、掲示品は厚肉の大様で評価はワンランク上で良いと思う。

小字無爪永背刔輪前1削波          【評価 8】
背の中央一番下の波の頂点付近が鋳切れるもの。
小字背削輪右四削波              【評価 ?】
右上の波が輪接部分で切れているもの。銭譜に正式に紹介されてはいないが類品の報告あり。加刀によるものらしいが文政期とは異なり左下の波は一直波にはなっていない。
小字無爪永背削輪真鍮銭         【評価 3】
安政期銭は黒褐色系の色調が多いのだが稀に真鍮色を呈したものが見つかる事があり少ないとされる。ただし中間的な色調のものもあり、雑銭から拾えることもある。色の変化は意図的なものではなく、価値観はコレクターが決めるものであるので、深追いは禁物。下に掲示する俯永がまさに中間体の色である。
安政小字の背波の変化
 → 秘宝館

(新寛永通寶図会より)
背濶縁 背濶縁左1直波 背削輪左3直波 背再削輪左1直波
 
安政小字にも文政期と同じように背波の変化があります。なかなかの希少品で私はまだすべてを拾い出すことができません。【背濶縁】としましたがこれが本来の基準銭で、背内径が21oに満たないもの・・・おおむね19.5oぐらいだと思います。【背濶縁左1直波】も同様です。【背削輪左3直波】は通常の背の内径と同じもの。【背再削輪左1直波】の背内径は21.5o前後あり、これが一番少ないと思います。評価は左の3つがせいぜい1万円前後、右端のみは2万円くらいでしょうか。(新寛永通寶図会では5万円以上の評価がされていましたが、そこまでの市場価格はまだないと思います。)さらにこの真鍮銭もあるそうで、これは本当に希少銭です。安政期銭の変化は目立たないので雑銭からの選り出しの可能性があると思います。
 
俯永         【評価 少】
安政期は小字が99%以上を占めているが、実は他の書体も存在する。その中では最多なのが俯永であるが、これとて滅多に見られない珍品である。
大字            【評価 大珍】
明和期ほどではないにしろ安政期においても大字書体は存在する。鑑識のポイントは背最上部の波の角度と永字の大きさ。絶対的な珍品なのだがごく最近古銭売り場で選り出した方がいらっしゃいます。
その他、正字、大頭通などもあるようですが市場にはまず出てこないでしょう。

(平成17年銀座コインオークションカタログより)
大字             【評価 大珍】
短尾寛方冠寶の発見者が選り出した大字銭。現品を確認しましたが、文政期では絶対ない。ものすごく肉厚で、穿内仕上げ、横面のロクロ仕上げはかなり荒っぽい感じ。文政期写しの密鋳の可能性もあるのですがそれにしても珍しいもの。
銭径:27.87o
 内径:20.70o 
厚さ:1.50o 重さ:6.7g
 
34.明治期吹増銭 の類 年代(推定)慶応期〜明治期

文政期銭と同じ銅質でありながら、製作が粗い四文銭(恩賜手または明治期吹増銭と呼ばれる)の一群があります。
この類については明確な文献・記録はありません。古くは大川鉄雄氏の研究発表、続いて三上香哉氏の明治天皇行幸時の恩賜説などがありますが、あくまでも現物資料、傍証を積み重ねただけであり業界内では否定的な意見(文政期の未使用銭)すらあります。
しかしながら、仙台古泉会のH氏の現物研究もあり、文政期銭とは出現時期、仕上げ方法が異なることが明らかになりました。
三上氏が唱えた恩賜説についての確証はありませんが、明治初期に銭相場を地金相場変動性から四文銭有利の固定相場性に移行させたことから見て、この時期前後に意図的に鋳造が行われていたと見て良さそうです。
特徴は文政期の銅質で、輪側面の仕上げが粗い縦やすりになるもので、通常、面仕上げのあとに行われる側面砥石仕上げが省略されています。また、面の仕上げも目の細かい砥石ではなく、粗砥石のようなもので磨かれています。
製作は粗雑ながら未使用のものが多く見られるのも特徴です。書体は文政期のものと同一であり、使い込まれた場合は文政期との見分けが困難になると思われます。
なお、H氏の研究発表により、銅質については文政期と同一のものだけでないものもあることも判明しています。(通称:ガリガリ手)同じ製作で一見すると密鋳銭風ですが、内径や文字のサイズは文政期と同じ。側面の仕上げで見分けるのが良いと思います。

側面の仕上げ
やすりで上下方向にガリガリやった感じです。面の仕上げがそのあとにあるようでバリが側面に飛び出しています。この方法は文政期とは明らかに異なります。流通をしたものはここまでくっきりとした感じはありませんが、それでも雰囲気は残っています。
右の文政期未使用銭は全体に丸みを帯びていますのでふちのピントが合わずぼやけます。
一方、吹増銭は流通磨耗していてもほぼ平面的にに磨耗しているので区別できます。
 吹増銭  文政期未使用銭  
この違いを見るのにはルーペが必要です。文政期の未使用銭との差を見分けるには肉眼では困難かもしれません。
参考)文政期未使用銭
面背に粗い砥石目が残る未使用銭。ただし側面の仕上げが丸く異なります。

上の側面画像は8倍にまで拡大しましたが、山形になっているのでピントがうまくあいませんでした。
小字
輪の仕上げ以外は上掲銭とあまりかわりません。側面は粗い縦やすり、面背は粗砥石の磨き痕が走ります。
小字濶縁一直波
文政期にある書体は一通りあるようです。違うのは製作のみ。
俯永
大頭通、離用通、大字、正字などにも同じ手はあるようです。
俯永(異銅:ガリガリ手としたもの)
仙台古銭会のH氏から頂戴した貴重な1枚。どうみても風貌は俯永写しの密鋳銭。しかしながら詳細を調べるとこれは明治吹増銭と一致します。すなわち母銭が同じ。銅質は異なりますが側面の仕上げは同一です。
混乱期でもあったのでこのようなものも出現したのでしょう。

詳細は以下のコーナーをお読み下さい。

→ H氏 密鋳銭コレクションボックス
 
  
35.寛文様 の類 年代鋳地不詳
密鋳銭に過ぎない存在なのですが、古来からほとんどの銭譜を飾っている超有名珍銭です。面文の範を寛文期亀戸銭から採ったと推定されるための呼称で、文政期頃の東北地方での密鋳ではないかと推定されています。
 
【密鋳 寛文様】 
寛文様           【評価 大珍】
密鋳銭の王者にして古くから知られる超珍品。名前の由来は面文が寛文期亀戸銭ににていることから・・・。他に無背のものや刔輪されたものがあるというが、おそらく見ることも出来ない珍品だと思う。なお、本銭は『古銭と紙幣・・収集と鑑賞』『新寛永通寶図会』などの銭譜を飾った由緒正しい品物です。
 
 
36.文久様 の類 年代鋳地不詳 
おそらく密鋳銭なのでしょうが、銅質が白銅〜黄白色で、安政期銭と同じような仕上げでありながら削字変化が多く、銭径がひとまわり小さくなる一群があり、古くから文久様と称され珍重されています。文久様の名称どおりやや小ぶりで文久銭に似て削字変化が多い・・・と、言うわけですが、一部立派な銭貨も出現しており判断が難しいところです。
 
【文久様の類】
正字手(新寛永通寶図会原品)   【評価 珍】
平成17年の銀座コインオークション、28年オークションネットの出品物にして、新寛永通寶図会の現品。白銅質の砥石仕上げ風貌にして背の形成などはまさに文久様たる正当品。文字の周囲に彫り込んだような加刀痕跡があり、通頭、永頭が反り返る癖がある。
俯永手(青寶樓旧蔵品)   【評価 珍】
著名なコレクターの収蔵品にあったもので、それだけを頼りにオークションで落としてしまったもの。このタイプのもの(黄白色の未使用品)は水戸地方で挿しの状態で見つかったものという伝承があり、制作があまりに立派なので疑問視される向きもあると思う。一見、安政期俯永の磨輪真鍮銭かと思ってしまう。寛目、寛尾、寶冠などに加刀が見られる。CCF、収集、オークションネットにも出品されていてなかなかお嫁入りできなかったもようである。
離用通手       【評価 大珍】
非常に精緻なつくりの未使用品で、上掲の品と同規格のように見える。文字に加刀痕が見られ、特に寛後足の形状変化(右下がりで極端な内跳寛ぶり)が目立つ。銭径は小さいが立派なつくりである。
※平成17年の銀座コインオークションでは黄白色の手のものを審議品という位置づけをしています。未使用銭で側面の仕上げが近代的なロクロ仕上げですので、判別そのものが厳しいのです。上掲品群を見る限り、正字手は前期文久様であり、離用通手は後期文久様と言えます。俯永手は中間品で雰囲気的には悪くないもののやはり未使用で大ぶりという点はからみて後期錢に近いものかと思います。
 → 秘宝館
  
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