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番外随想・・・掘り出し物の記憶
 
長く収集していると幸運の女神が微笑みかけてくれることがあります。そんな甘酸っぱい記憶をお届けいたします。
不知銭 俯頭通 不知銭 奇天手張点保
文政期大字 
長門手本銭 奇永垂寛 元文期十万坪銭輪十後打通下
寛文期亀戸銭深字破寛 寛文期亀戸銭島屋文小頭通細縁
小字(厚肉最大様)【採取地 銀座コイン】
このサイズは母銭の大きさである。肉厚もたっぷりで重さもずっしりとしている(7.3g)が内径は普通で制作は間違いなく通用銭である。雑銭からの選り出しだが、これ以上のサイズを私は見たことがない。外径29.0o,、内径20.8o、重量7.3g。
長貝寶                
2007年の国際コイン・コンベンションでの掘り出し物。この手のものとしては標準サイズですが文字周囲に未使用色が残る極美品です。
こんなものがひょこっと入手できるとは・・・同じお店で不知長郭手も拾いました。まさにラッキーです。
 
上掲の品々は皆、掘り出し物です。私の主戦場はコイン店と入札ですので厳密に言うと、掘り出し物ではなく、また、それ相応の対価を払って購入していたものもありますのでお買い得品であった・・・という方が正しいのかもしれません。
それでも、支払額に対する私の満足度の高揚が並外れたもの・・・してやったりという感のあるものばかりです。
それでは私の古銭収集における【黄金の一発】をいくつかご紹介します。

俯頭通は中学生のとき、コイン店でおとし玉(12000円)をはたいて購入したもので、これはお買い得品でしょうね。私が穴銭収集にのめりこむきっかけになった記念すべき一孔です。どうです、美人でしょう?ちなみに購入後はバス代やお昼ごはん代もなくなってしまった記憶があります。

張点保は今から20年ほど前、都内某デパートの古銭売り場の雑銭コーナーで発見したもので漆喰だらけでとても汚いものでした。今は亡き祖母と訪れたデパートでの思い出ですが、その古銭売り場も今はありません。
この頃の天保銭は掘り出し物の宝庫で古銭屋の店頭で50枚くらい見れば必ず数枚の地方銭や不知銭が拾えました。私の初期天保銭コレクションはその多くが掘り出しで占められていてあまりお金がかかっていないのが自慢でした。

奇永垂寛手本銭は数年前、なぜか普通の奇永の手本銭としてとあるお店(コインフェア会場)で売っていました。(価格も1万円以下でした。)見落としでしょうがラッキーでした。また、勁文削字刔輪手本銭も同価格で購入。お買い得でした。(画像では垂寛の特徴が良く判りませんが、原品は間違いないものです。)

輪十通下打も同じコインフェア会場で雑銭の中から見つけました。しかもコインフェアは2日目以降だったと思います。これは奇跡です。その日の帰宅途中に車列の間から飛び出してきた子供をあやうくはねそうになりました。幸い、ぶつからず転んだだけの擦り傷で済んだのですが本当に肝を冷やしました。3〜4歳くらいの男の子で、目撃者の証言で私の運転に問題がないことが証明されましたが、好事魔多しとはこのことでしょうか?

その年は当たり年だったようで、
文政大字もほぼ同時期に都内某コイン店の店頭で文政小字と表示されて雑銭に混じっているのを発見しました。見落としですね。

深字破寛はなかなか入手できなかった1孔で、入札誌で思い切った価格で応札してようやく手に入れました。ところが翌月、別の入札誌に中字の手替わりとして出品されているのを発見してびっくりしました。拓本は面側しかなかったのですが自分の眼力と勘を信じて格安で落札に成功したものです。かくして私の手元に深字破寛は2孔納まる結果となっています。

文政小字最大様は採取地を明かしてしまいましょうか・・・銀座コインさんです。店頭のばら売りコーナーから変種だと思い拾っていたのですが、浅草古銭会の石川さんに正字縮文で良いとの判断を頂きました。ほんのちょっと昔のお話です。ここでは正字縮文や、25.7oの文銭も拾っています。今はもうないでしょうね。

島屋文小頭通細縁は鑑定に出して大騒ぎになってしまったもの。鑑定結果による掘り出し物であって、自分の目で撰んだわけではないので、ラッキー以外のなにものでもありません。購入時にはそれなりの対価も支払っています。鑑定によって不安だった真贋については決着を見たのですが、はたしてこれが新種なのか母銭なのかということの結論が出ていません。個人的には新種2、母銭8といったところでしょうか?とにかく特殊な銭です。なお、鑑定後に島屋文の本体の細縁を見る機会に恵まれたのですが、やはり制作については材質、仕上げとも特殊で、一般の通用銭とは異なっていたと思います。

これ以外にも小さな掘り出しにはちょくちょく出会いますが、失敗もけっこうありますので成功率がそんなに高いわけではありません。格安で手に入った!掘り出しものだ・・・と、私が騒いでも女房に言わせれば、古銭にお金を使うことがそもそも間違いで、掘り出し物と言っても自己満足に過ぎず、無駄遣いの言い訳だそうです。そのとおりです。

掘り出しの極意は運と手数しかありません。プロでも見落としや誤りはよくありますので、根気よく探しているとそういったものに出会うチャンスは必ずあります。そのときに役立つのが銭譜の勉強で、何か違和感を感じたら高額でない限り購入することです。もちろん、多少の失敗は覚悟の上です。注意すべきは相手の見立て違いや贋作で、
穴銭が不得意な古銭商は意外に多く、穴銭の専門店でさえもけっこう間違っています。
掘り出し物を見つけた・・・と喜んでいたら自分が掘り出し物(カモ)にされていたなんてことのないように気をつけて下さい。この世界はプロでも食べて行くのが難しいのです。欲に目がくらみ趣味を超えた領域に踏み出すときはご用心を・・・。

オークションで掘り出し物を見つけることもありますが必ず目利きが複数いて競り合いになりますので、儲けは期待できません。ただ、オークション後半は皆予算を使い果たしていますので、ほとんど無競争で落札できる幸運もあります。残り物には福があるのです!
入札は相手が見えないので一発勝負が可能です。そのかわり間違っていたら原則自己責任だと心得て下さい。

ねらい目は大様銭、細縁銭、白銅銭、密鋳銭あたりで最近は四文銭にチャンスが多いような気がします。また、将来性を考えて今のうち収集をするのなら安南寛永、面背逆製などの錯笵銭が面白いと思いますがどうでしょうか?(お断りしておきますが儲けようと思ったら失敗しますよ。これは趣味の範囲のお話ですので・・・)
 
 
 
撰銭の達人 現る!!
最近、いろいろな方からメールを頂くようになりましたが、ものすごい強運の持ち主の方に出会いました。その名はK氏です。私も撰銭は行いますが、最近はうぶ銭に出会うことでさえ稀です。ネットオークションではことごとく敗れており、運良く入手したものはくず銭ばかりでした。ところがこのK氏、本格的な収集をはじめたのが昨年(平成15年)だというのに、島屋文1枚、島屋文小頭通2枚、志津磨大字本体1枚と収集家垂涎の品物ばかりを撰り出しています。採取地も福井・福島・青森・岐阜とばらばら、ネットオークションなどもまめにチェックしているようです。これだけ見つけるとなるとかなりのお金持ち・・・かと思いきや、雑銭購入枚数は300枚から1000枚程度とのこと・・・。これはもう幸運を通り越して神の領域にあるとしか考えられません。画像を頂きましたので掲示します。ひれ伏してご覧あれ!!(H16.10)
島屋文(狭文)
これが雑銭から出てきたら私は心臓が止まってしまうかも・・・。収集家が一生かけても発見できるのは稀だといわれます。しかもすこぶるの美人です。
島屋文小頭通
輪の欠けが残念ですが、輪幅がある大様美銭です。完全だったら20万円以上の値がオークションでつくと思います。(完品なら銭譜を飾るにふさわしい名品ですね。)
島屋文小頭通
上のものに比べるとやや小ぶりですが、状態は非のうちどころがありません。最近のオークション出品のいずれにも優ります。
志津磨大字
K氏の投稿第一号です。島屋文以上の希少品かもしれません。しかもこれも美銭です。

まさに黄金の4連発・・・神様は不公平です!
縮字背文深冠寛
再びK氏の投稿です。(美銭ですね!)この変種は2004年の1月に大分の坂井氏の発表があったばかりのもので、その段階では日本の有名泉家で6孔確認ができたそうです。(これは新種として公的に認定されても良いと思います。)もしや私も・・・と思いましたがあるはずはありません。(私は小品拾い出し専門で大量収集家ではありませんので・・・)それにしてもK氏はすごいです。おめでとうございます。

→ 縮字背文深冠寛
 
撰銭の達人 再び! 
またまたK氏からのご投稿です。ありがたくご覧下さい。私もかくありたい・・・とりあえずグリーンジャンボ宝くじを購入してみます。(H17.2)
天狗寛永
大谷敬吾氏が収集誌上に発表して以来、過熱気味な価格取引がされているこの天狗寛永・・・まず市場には現れませんね。最近はうぶ銭に出会うこともなく、私はほとんどあきらめています。それにしても完璧な美品。ポイントの鋳だまりもしっかりあります
長爪寛片川
たしかに寛爪が長いですね・・・。花粉症の私はどうも鉄銭類は苦手でつい敬遠してしまっていたのですが、こんなものが出てきた日にははまってしまうでしょう。
古寛永 背下一(錯笵)
これはご愛嬌・・・古寛永仙台正字手の背に見事に一の文字が・・・。鋳だまりによる偶然ですがはっきりしていて面白いですね。市場価値的にはあまりないと思いますが、私もつい拾ってしまう変化です。
古寛永昂通無背
200枚ほどの寛永銭の中から出てきたそうですけど、この寛永通宝の分類を瞬時に見抜くことができる収集家は、果たして日本に何人いるでしょうか?良恕だと間違えること必至です。
2019.1.25投稿
 
穴銭収集と私
古銭を集めはじめる前は、ごく普通の子供と同じようにミニカーや使用済みの切手を集めていました。(プラモデルやメンコ、基地ごっこなんてのもやりましたよ。おもちゃはブリキからプラスチック主流に変わったころでしょうか?)
古銭の収集品第1号は天保通寶の本座広郭です。小学5年生のとき本物の小判だと思い、ありったけのミニカーと交換してしまったのです。ミニカーはマッチボックス社製(1台¥150で購入)のもので100台くらいはあったと思います。親にはめちゃくちゃ怒られましたが金色に輝く1枚の天保通寶を手にして大満足でした。それから家捜しをして父の引き出しから安政一分銀やオリンピック硬貨を発見しては仲間を増やして楽しんでいました。そのうち、デパートのコイン売り場で安い近代貨を買うようになりました。

間もなくコインブームが到来し、月600円のおこづかいの子供にはどうにもならない状況になってしまいました。そんなときに千葉市の古銭屋の片隅で埃をかぶっていた穴銭の山を見つけたのです。それまで月に1、2枚しか増えなかったコレクションが、いっぺんに20〜30枚も増える事が可能になった瞬間です。渡来銭や背に文字のある寛永通寶から選びはじめ、書体に違いのあることが判るようになりました。そのうち集めるには文献を買わないとだめだという事が判り、お年玉で寛永通寶の鑑識と手引きを購入したのが病気のはじまりでしょう。(漢字もろくに読めないのに!)

集めはじめた頃は、穴銭について妙に詳しい子供・・・と古銭屋で言われることが快感でした。購入するのは安物の雑銭の山からの選り出しばかりです。古銭屋のほうもしたたかで、はじめは1枚10円だった古銭の山がいつの間にか20円、30円と値上がりしてゆきます。

中学生になったら部活が忙しくなり、古銭を買いに行く機会はずいぶん減ってしまっていました。その代わり、試験の度に親が報奨金を出してくれるようになり、欲に目がくらんでつい一生懸命勉強するようになりました。そのため、子供には高額の古銭書もなんとか手に入れられるようになりました。親も本を買うイコール勉強することだと思っていたらしく結構寛大でした。穴の細道は雑銭からの掘り出しの楽しさを教えてくれた名作ですね。符合銭誌、清朝銭譜、天保銭譜、安南銭譜など次々に手に入れています。俯頭通はこの頃入手した珍品です。

親の【馬の鼻先にニンジン作戦】が功をそうし、無事高校に入学。ここでも古銭収集は中国史や日本史の元号を覚えること、漢字の習得などに役に立ちまして、3年後には第一志望のK大学にもぐりこむことに成功しました。
大学時代も趣味は続けていましたが、スポーツ系のクラブ活動が忙しく余分なお金もなかったのでときおり思い出すように雑銭ばかりわずかに集めていました。下宿生活でお金のありがたさを覚えましたね。張点保はこの頃発見しています。

社会人になって給料をもらうようになって、お金を稼ぐ大変さがはじめて分かりました。島屋文などの高額品は社会人になって間もなく購入したのですが、もはや高額品にしか未収品が残っていないことにむなしさを覚え、この趣味から遠のく頃でもあります。以降、約10年間の空白期間ができています。その間は仕事や青年部、消防、JC活動と大忙しでした。休みなんかほとんどありません。流通でしたから朝は5時半から現場に出ていて、仕事が終わると夜は12時まで地域活動の超人的な生活でした。とにかく体を動かしていないと不安になる生活、自分の体をいじめるのがストレス解消法でした。若かったなぁ。

趣味が完全復活したのは【開運、何でも鑑定団】で刺激を受けたからです。また、ハドソン社の寛永通寶図会や富山貨幣研究会の三鍋氏の研究に触れる機会もあって、寛永銭の手替り分類という新しい道を見つけたことも大きいと思います。それからは月刊収集を購読し、入札誌を取り寄せ趣味街道まっしぐらです。

本当はスポーツを趣味にしていたかったのですが、ゆえあってゴルフを禁じ、お酒も一時断ち、スキーも何年もやっていません。(そこそこにうまかったんですよホント)
映画を見たり、山歩きも大好きなのですが、最近は子供も小さくあまり出歩けませんので私の唯一の息抜きが穴銭の収集分類になりつつあります。(おかげでぶくぶく太ってしまいました。)

そして今年になってついにホームページにまで進出発展しています。はじめは仕事場のホームページを作成していたのですが、つい(練習ではじめた)こちらの方に力が入ってしまいました。それでも寛永銭専門のネット銭譜は日本でも初めてのはず。趣味のメジャー化にもきっと役立つ・・・はずなのですが・・・。

平成16年7月 浩泉丸
 
 
 
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