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4.佐渡銭(背佐銭) 

江戸時代、天領であった佐渡でも銭の鋳造の記録が残っています。その多くは背に佐の一字があり、佐渡鋳造を主張してくれていますが長期に渡って鋳銭事業が行われたため、なかには背佐字のないへそまがりもいるなど、各時代の代表的な書体がそろってとてもバラエティに富んでいます。
鋳銭事業は順調にいっていたとはけっして言えず、当初は立派な制作であった佐渡銭も時代を経るに従って粗末なものになってゆくことが伺えます。
なお、日光御用銭とされているものは、古くは徳川家の日光参拝のおりの鋳銭であるという伝説があるようですが、明確な根拠がなく書体が正徳期佐渡銭に酷似していることからこの一群に含めて掲示します。

書体により、正徳期御用銭、正徳期銭、享保期銭、元文期銭、鉄銭座銅銭、明和期銭に中分類されます。
 
【正徳期御用銭】
正徳期御用銭(母銭式) 【評価 稀】
直径が26.4oもあり、一文銭の域を超えています。制作も丁寧であり、母銭に準じたつくりです。手本銭ではないかと思いますが日光御用銭という名称は捨てがたい。存在は非常に希少ですけどたまに市場に姿を見せます。
※このように赤い銅質のものは後作ではないかという説がありますが、確証はありません。
→ 四ツ宝銭 幻足寛
 
【正徳期 佐渡銭】 
正徳期背佐 【評価 8】
書体は御用銭に非常によく似ていて、御用銭が手本銭であるという説を裏付けています。背の佐字は草書体です。書体変化はありません。ごくごく稀に白銅銭があると一部の泉譜に記述があるのですけど、私は未確認です。通常の銅色は茶〜暗赤褐色です。
 
【享保期 佐渡銭の類】
享保期背広佐(大様) 【評価 9】
面文は寛文期亀戸銭の縮字勁文(または正徳期亀戸銭縮字無背)とほぼ同一で、通字用画に鋳切れがあります。違いは背に行書体の佐の一字を置くことですけど、美銭から作の劣るものまでかなり差があります。広佐は佐字が輪と郭に接していて、袋部分が広く大きくなります。掲示品は直径が25.25oの大様銭で、評価は8位以上です。
→ 寛文期亀戸銭 縮字勁文
享保期背広佐(最大様 【評価 ?】
外径25.75o 重量5.0g
享保期背佐類は亀戸銭の縮字背勁文(刮去)を利用して作られていますので、おおぶりのものが散見されるのですが、ここまで大きいと本銭を超えたサイズです。本銭は郭内に角仕上げがあり特別な品の雰囲気があります。不跳永ではないものの民鋳の改造母銭なのかもしれません。
享保期背狭佐(大様) 【評価 9】
広佐とほぼ同じですけど、背佐の袋部分が狭くて背佐字もいく分小さくなっているもの。銅色は黄褐色〜淡褐色。佐渡銭は銭径や制作にかなり差があり、粗銭も多く見られます。掲示はほぼ最大級のもので直径25.2o。評価は通常銭より上にすべきだと思います。
享保期背狭佐(欠尾寛) 【評価 6】
欠尾寛は寛字の跳ねが加刀によって失われたもの。小変化ながら探すとなるとなかなか見つかりません。
享保期背縮佐(大様) 【評価 9】
背佐が縦に縮んで、輪と郭から離れます。掲示品はかなりの美銭ですが、かなり作の劣るものも散見されます。しかも掲示品は直径25.4oある大様銭。評価はやはりワンランク以上あげても良いと思います。
享保期背縮佐(垂冠寶) 【評価 7】
寶字の冠の前垂れが垂直気味になるもの。そのため輪との間隔が広く空きます。加刀による微細変化ですけど、注意しだいで拾えると思います。
民鋳狭佐(不跳永) 【評価 7】
享保期佐渡銭には永字が跳ねない作の粗い一群が存在します。旧譜はこれらを民鋳として分類しています。民間が鋳銭を請け負ったことは間違いなく、これらが民鋳であろうことは納得のゆくところですけど、粗雑な作は不跳永に限らず存在します。そのため、どこまでが民間鋳でどこまでが官鋳なのか区別がつかないというのが本音です。広佐、縮佐の不跳永もも存在します。
 
 
【元文期 佐渡銭:背佐類】
元文期背正佐(大様)  【評価 4】
面文は元文期十万坪銭に酷似していますが、永柱が反り永字の跳ねが切り取られています。また、十万坪錢を写しているためいく分文字が縮んでいるように見えます。背の佐字は行書体できっちりと郭上部に納まっています。銅質は黒褐色〜白銅色で、磁性があるのも特徴です。
→ 元文期十万坪銭 
→ 元文期白目銭 十万坪手
元文期背正佐 【評価 5】
通常銭のサイズはこの程度ぐらいです。輪側には銭面と交わる方向に縦やすりがかかっています。
元文期背正佐(白銅銭) 【評価 5】
元文期の佐渡錢はたいがい白銅質ですけど、黒いものが多いと思いますが、かなり白く発色しているものも散見されます。
元文期背濶佐(白銅銭) 【評価 3】
背の佐の字が幅広く大きいもの。書体は元文期の代表的な書体の含二水永+長爪寛+虎の尾寛で、面の書体は萎縮して寛尾はあまり長く尾を引きません。もちろん永字は跳ねません。
元文期背断佐 【評価 3】
背佐の袋部分下部の横引きが加刀を受けて短くなり、完全に底抜け状態になっているもの。
 
 
【元文期 佐渡銭:鉄銭座銅銭】
元文期鉄銭座銅銭 【評価 少】
母銭に背佐鉄銭の母銭を応用して鋳造したもの。背佐は刮去されています。書体は大きく文字はのびのびしている。製作は劣り目立たないもののかなりの珍銭です。
寛保期とする銭譜もあり、元文5年は元文末であるためその方が分類上はすっきりするかもしれません。

→ 類似書体の分類 
元文期鉄銭座銅銭(背広郭 【評価 少】
背郭が通常銭より広くなります。存在は通常銭より少ないものの認知されていないため、通常銭として購入できることがあります。これもそうやって手に入れたもの。
参考)元文期鉄銭座銅銭 背広郭母銭
平成16年銀座コインオークションの目玉商品でした。市場初出品?であり160万円の落札価格がついていました。
(銀座コインオークションカタログから)
元文期鉄銭座銅銭(面背逆製) 【評価 少】
母銭を砂笵に置くときに表裏逆置してしまったことによるエラー銭。本体銭がかなりの珍品でそのエラーなので珍品中の珍品です。おそらく存在数の単純比較だったら島屋文に勝るとも劣らない大珍品でしょうけど、状態はどうしても悪くなるので一般収集家受けしない面構えです。雑銭の面背逆製は、元価格の10倍以上はするので、本当なら【大珍】・・・と評価したいのですけど、【少】だって怪しいかもしれません。
→ 面背逆製の寛永通寶
→ 錯笵銭物語
→ 特別展示室
 
 
【元文期 佐渡銭:含二水永無背の類】
佐渡含二水永(大様)  【評価 5】
面文は元文期十万坪銭の含二水永と同じですけど、磁性があって磁石に吸い付くので区別できます。永字形状が独特で、背正佐などと似ていますが、永に跳ねがあること、背郭が大きいことで分類できます。輪側は銭面に対して縦方向のやすり目で、これも大事なポイントです。
→ 類似書体の分類 
佐渡含二水永 【評価 7】
掲示品は銅色も黄色く、銭径も小さくて前の掲示品と全く別のものに思えますがやはり磁石に吸い付きます。なかにはもっと極端に磨輪されたものもあります。
佐渡含二水永(大様白銅銭)  【評価 5】
白銀色の肌を持った寛永銭。これは大様です。
 
元文期佐渡銭背佐無背・・・ もどきたち
一部の銭譜には説明がありますが元文期佐渡銭背佐無背の正品はまだ見たことがありません。 

上段:背に鋳ざらったような跡があり、期待を持たせますが背郭が大きく含二水永の最大様のようです。

下段:背小郭で元文期佐渡銭背佐無背としたいところですが、かすかに佐の底部が残っています。刮去となれば新種確定なのですが・・・。今のところ濶佐のできそこないとしか評価できません。
両銭とも永字の跳ね部分が確認できません。
 
 
【明和期佐渡銭の類】 
明和期背佐(大様)  【評価 8】
文字の修飾が強く横広で寛尾は外側に跳ねます。製作は粗雑なものが多く、白銅質のものも多い。掲示品は白銅質大様の美品でワンランク上の評価をしても良いと思います。
明和期背佐(磨輪最小様)  【評価 6】
直径21.5oで鐚銭の様に薄っぺらなつくりです。末鋳銭でしょうけどよくこんなものが流通したと思います。ここまでは小さくなくとも、次鋳サイズの小さな佐渡銭は時々見つかります。
明和期背佐刮去 【評価 5】
背佐を刮去して無背となったもの。通常母銭を改造して母銭を鋳造したものらしく、内径はやや小さく次鋳サイズになります。地味ながら存在数は少ない。画像の品ほど製作の良いものは得難い存在です。
→ 類似書体の分類 
 
廃棄母銭? 【元文期佐渡銭 鉄銭座銅銭】
廃棄母銭? 元文期佐渡銭            【評価 不明】
この書体のものはは本来は鉄銭であり、銅鋳は母銭のみです。それにしては出来が悪すぎます。
郭内に仕上げ痕が残り、銭径も大きいのでおそらく廃棄母銭の火中変化ではないでしょうか?それとも出来が悪いから溶解されかけたのかも?
 
 
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拡大画像サーフィン
佐渡銭類の拡大図
御用銭 正徳期背佐 享保期背佐 民鋳背佐
元文期背佐 含二水永 明和期背佐 鉄銭座銅銭
 
 
正徳大字背佐母銭(稟議銭)
平成25年のオークションネットに突如出現した大珍品。正徳佐の通常母銭として出品されていました。
これに気づいたのは2名だけ。私は当然のように見逃していました。書体の微妙な違いを感じて下さい。(寛冠・寛目・寶冠・寶後足が大きい)
しかし、このようなものがあるということは通用銭がひょっこり出てきたりして・・・。
参考)天明期佐渡銭 稟議銭背佐【評価 大珍】

稟議銭です。鉄銭が当たり前の時代に銅銭を鋳造する計画があったのでしょうか?

(平成17年銀座コインオークションカタログより)
 
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