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逆引き天保銭事典  
天保銭を収集していて分類に行き詰ることもあろうと思います。ここでは各藩の基本銭を中心に分類のポイントを示します。なお、天保銭には寛永銭類とは異なり、例外的な不知銭が多数存在しますので、その点を充分にご理解の上でご覧下さい。
【本座銭の基本書体】
本座広郭(母銭)
もっとも基本的な書体ですので冒頭に表示します。全くと言って良いほど癖がありません。まさにお手本の書体です。
保の右側の点の延長線上に保の口の左角が重なります。これは薩摩後期銭類との見分けの最大ポイントだと私は思っています。
藩鋳銭の鑑識は、本座広郭と比較して行うのが良いと思います。
※細郭・中郭も同じ書体です。
薩摩広郭の書体。保の点の角度が違う。
本座長郭
こちらがはじめて出た書体です。広郭とはことなりかなり癖があります。
天:中心位置が右寄りにあるため前足がわずかに長くふんぞり返る印象があります。
保:人偏の傾斜が少しきつく、保点が長く湾曲します。文字全体が縦に長い印象。
通:折頭(しんにゅうの折り返し点)の先端が辵頭とほぼ並びます。そのため辵がふんぞり返る印象があります。狭用通で通尾も勢い良く跳ね上がる感じ。辵頭、折頭とも下の方から筆が入っています。
寶:尓の後天長く湾曲。狭貝寶になる。
 
ステップ1 背広郭で狭穿、通字の辵に勢いがある。 → 薩摩後期銭類
薩摩藩銭 広郭
本座広郭に酷似しています。一般的に背郭と通字の形で見分けますが、慣れないうちは難しいかもしれません。
ただ、これをクリアしないと天保銭分類は覚つきません。この書体の癖を頭にたたきこんで下さい。
保:口画の第一画が上部に出る癖があるため横画が反り気味のものが多い。
ホ後点が立ち長い。(これは私の識別ポイントです。)
通:一番癖が強い。辵頭はやや下向き
。しんにゅうの下部は力感があり、長く払われる。
(短尾通もあります。)
當:田の幅が広い。
その他:背郭が広く、穿が狭い。銅色が黄色いものは本座に良く似ています。極印は小さい。
銭文径は本座よりわずかに大きくなります。(41.5㎜以上)
 
 
ステップ2 中央の穴がとても広い!文字も大きい。 → 薩摩前期銭類
薩摩藩銭 (横郭短尾通)
あきらかに本座長郭がモデルです。
ガマ口と呼ばれるほど穿が大きく、文字も全体に横広で気持ちよいほど大きくなります。
書体は本座長郭を模したものとすぐに判ります。
銭形も横広で大きくなります。
また、文字が大きいためどうしても細縁気味になります。

花押は大きく後ろ側があがります。

他に穿がやや縦長で通尾の長いものもあります。
 
ステップ3 辵の折頭にカギ爪がある。 → 盛岡藩銭(浄法寺含む)大字・銅山手 
(浄法寺) 大字(改造母銭)
盛岡藩銭も説明不要なぐらい個性的な書体です。文字は巨大で太細がはっきりしていて、通の折頭にかぎ爪があります。
雰囲気的にはなんとなく濶字退寶に似ている書体だと思います。
盛岡藩銭銅山手(本炉:大様)
これも非常に個性的な、しかも格式のある書体です。通字の折頭にかぎ爪があるのは大字と同じですが、通字が縦長に大きく寶字を圧縮します。
極端に銭径差がある場合があります。
例示品はほぼ最大様のものです。
 
ステップ4 花押の頭が太い。 → 水戸藩銭濶字退寶
水戸藩銭 濶字退寶
個性派書体の代表格で、よくネットオークションに珍品面をして出ていますが、雑銭に近い存在です。通字前のめり、寶字が引き気味で実にアンバランス。
背の當百もはっきり前に傾きます。
決定的なのは背の花押の頭が極太なこと。慣れるとこれだけで判別が可能なぐらいです。
 
ステップ5 通尾がうねり長く尾を引く。 → 曳尾類・秋田藩銭類
萩藩銭 曳尾(細字大字)
この書体は一度見たら忘れられないでしょう。
通尾と背の花押の下端の形状を覚えておいて下さい。
あと、このざらざらした肌も特徴です。
秋田藩銭 (広横郭)
秋田藩銭は色が赤いものが多いのですが、細郭などは黄色のものが中心で、絶対条件ではありません。
書体的な特徴は通字のしんにょうの横引のうねりで、気持ちよいほど上下に丸くうねり長く尾を引きます。また、寶尓の両方の点が長く縦向きになっています。
背は文字、花押とも大きく、花押のカーブが上に盛り上がっている独特の形状です。
(盛岡大字や萩平通も同じような癖があります。)

水戸藩銭 遒勁(小足寶)
個性派書体の代表です。もちろん、一度見たら忘れられない存在です。
郭が横長、覆輪をしたのか銭径が縦方向に縮み横に広い独特の形状です。文字の端々に修飾が見られ、縦画や点は弓状(三日月状)に反り返る癖があります。
通用の右肩に突起状の飛び出しがあり、寶尓の第3画と4画が接します。
こんな個性的な書体を堂々と出してくるのは、かなり力のあった藩だったと思います。
贋作が非常に多く、正型抜きあるいは母銭からの写しのようで特徴もそのまま伝えているものが多く注意が必要です。贋作は全体に肥字になるものが多いようです。意外に長径は短く、その反面短径はたっぷりとられています。

 
ステップ6 通字が扁平。 → 萩藩銭平通・盛岡藩銭小字(浄法寺を含む)
萩藩銭 平通
これも実に個性的な書体です。文字は全体に幅広ですが通字が上下に圧縮されて窮屈そうです。
銭径の大きいものが多いと思います。
背の當百はとても幅広。百の横引が長く弓状にしなるのが印象的です。
濶字退寶に面文の癖が似ていて初心者は間違えやすいと思いますが、背の特徴は全く違います。
(浄法寺)小字(仕上通用)
非常にすっきりした格調ある書体。密造であることを少しも隠さない自己主張は藩鋳銭系ならではのもの。
通辵の頭が長いのが目立ち通字が平たく見えます。良く観察するとしんにょうの折頭にわずかにカギ爪のような膨らみもあります。
会津藩銭 萎字
素朴な書体の大珍品。出会うだけでラッキー。市場には滅多に出てきません。
 
ステップ7 横点通・短足寶である。 → 水戸藩銭短足寶
水戸藩銭 短足寶
横点通になるのはこの書体だけ。寶足が丸く短くなること、背の百の横引に筆だまりがあるのも特色です。面側はやや太字で深彫りです。
水戸藩銭 揚足寶
短足寶に似ています。ただしこちらは大珍品です。
 
ステップ8 文字が輪から離れる癖。 → 水戸藩銭接郭類・深字・萩藩銭進二天・縮通類
水戸藩銭 接郭
面背ともに文字が郭に寄ることが絶対条件です。文字の寄る程度は色々です。
なお、土佐額輪に製作が近似しているものがありますが、鋳肌や文字の寄り具合などから両者を区別することになります。
あるいは同炉なのではないかという説もあるようです。

→ 額輪
深字
小文字の軽量銭です。深彫りであること、細めの郭、右下がりの寶冠が鑑識ポイントです。
文字が離れるといってもわずかです。背當の位置を見ると良いかもしれません。
萩藩銭 進二天
曳尾や方字とは全く異なる書体ですが、個性的です。
文字が縮小して輪から離れます。保点が開くのとなんといっても天の二引きが進むのが目立ちます。
萩藩銭 縮通(仰二天 替)
文字の癖は進二天と同じですが、二引きは進みません。背の花押のくちばし部分が長く伸びるのが進二天との大きな違いです。

なお、本銭は二引が仰ぐ仰二天の類だと思いますが、傾斜部分が削られていてさほど目立ちません。

※人偏の反りは個体差があります。なお、この品は狭木保系に近いものである指摘がありました。
ステップ9 面は癖字。背は當が輪から離れる。 → 萩藩銭方字・水戸藩銭大字・会津藩銭長貝寶
方字(赤銅質)
これもかなり個性的な文字ですが、とくに通字のしんにょうがカクカクと曲がります。
背の文字や花押は面に比べてとてもおとなしくなります。保の点は開きます。
大字(異頭通)
個性的な大文字の天保銭ですが、対照的に背の文字が小さいのが印象的です。
天の二引きの筆はじめが上方から入るため、横引が直線的で力強いこと、通寶の二文字が横広であることもポイントです。
長貝寶
会津藩銭の特徴はそのざらざらとした鋳肌にあります。
長貝寶は長郭に似ていますがオリジナル性の高い書体で、通尾の跳ね上がりと狭く長い寶貝に特徴があります。天の横引には筆はじめの爪があります。
また、背當のウ冠の幅が広く、
第一画が前のめりです。冠のツも大きいのは短貝寶と共通の特徴です。
花押はやや扁平で後端が尖ります。
ステップ10 文字が郭から離れる癖・背郭が膨らむ。 → 福岡藩銭離郭類
離郭(中郭)
名称の由来は文字が郭から離れる癖があること。これは郭の加刀によるものらしい。
私個人的には、背の郭が高く膨らむ癖と、俯辵、大貝寶になることで判断します。
通字の辵頭が長いためやや前のめりに見えます。全体的にはなよなよした小文字体。寶字は貝の部分が大きくなっています。
背の當字の田画は歪むものが多く、百の字はほとんどが右上がりになります。(例外あり)
百の白は下すぼまりです。
花押にも癖があり、これだけで判断することも可能ですがある程度の眼力が必要でしょう。
ステップ11 花押の後角が丸い。(2番目の角も短い)肌も粗い。 → 会津藩銭濶縁・短貝寶・背異替類
会津藩銭 短貝寶(陰起通)
短貝寶は本座広郭に範をとったと思われますが、郭幅は狭くなります。ざらついた地肌と背當の縦画の傾斜を良く見ましょう。貝画が短く足が開く以外の特徴は長貝寶と良く似ています。
背の花押は後端が丸くなります。銅色は赤褐色のものが多いのですが、やや黄色いものも存在するようです。
面側の彫りはかなり深いものがあります。

会津藩銭 濶縁
これは本座広郭の覆輪写しなので、書体的な特徴はとくにありません。ただ、写されただけあって文字はとても小さくなります。独特の会津のあれ肌と、縮小した本座広郭の書体で判別します。
濶縁という名前がついていますが、中には中途半端なものもあるようです。
背郭が反郭気味になるということですが、確実にそうだとも言えません。
花押後端が丸くなること、極印が小さめで深く打ち込まれているのは鑑定ポイントです。
銅色は赤~黄茶褐色のものまでが見られます。

石持桐極印銭 正字背異替
銅色は赤茶系だけでなく黄褐色、黒褐色、紫褐色、白銅質まで色々あります。
この品はもっとも荒れ肌のもの。

石持桐極印銭 正字背異替
これらが同じ銭座であるとはにわかに信じがたいと思われるかもしれません。
輪の幅も違い、銅質も鋳肌も様々ですから。

 
ステップ12 本座広郭に似るが花押の一番上の角が短い。 → 水戸正字背鋳類・水戸藩銭繊字
水戸 正字背異
繊字とは兄弟銭です。書体は本座を写したものですが背の花押の一番上の角が短く、袋の下角が丸くなります。
銅色はいろいろで、赤いものから黄色いものまであるようです。
水戸 繊字
本座広郭を改造してできたと思われる書体です。花押しの一番上の角が短いことは絶対的な特徴です。
正字背異と同系統と思われ、中間的なものもあるようですが文字の鋭さが目立ちます。
銅色は黄褐色が多いようです。

※背異との中間的なものも多いのですが、掲示品は繊字反画當といわれるもの。
文字の修飾が顕著で背當冠、寶ウ冠が前に開きます。繊字特有の保点も細く長く、人字が細く削られた結果、天の二引きが進んで見えます。
 
ステップ13 赤くて小さい(おおむね47.5㎜未満)。 → 秋田小様
秋田藩銭 小様
基本的には本座の写しなので書体変化はありません。この赤い色と大きさが47.5㎜以下であることが条件です。(例外もあるようです。)
似ているのは石持桐極印銭の正字とかつて南部民鋳とされた額輪の小様赤銅銭、秋田本座写の赤いものですが、いずれも48㎜ぐらいの大きさがあります。
※本座との中間タイプの品で銭形の大きなものも存在するようです。
 
ステップ14 本座を覆輪して写した類。
額輪(称・南部民鋳赤銅)
あえて色の真っ赤なものを掲示しました。
土佐額輪は製作の差が激しく、比較的きれいなものから文字がつぶれてだらけたものまでかなり範囲が広いようです。
通常は褐色系の色合いのものがほとんどですが、稀にこのように真っ赤になるものもあるそうで、これを称・南部民鋳として別にされている収集家もあるようです。
銭径は縮小傾向にあり、小さいものは48㎜を切ります。ざらざらで小さい奴は土佐を疑って下さい。
もうひとつの特徴として、輪側面の極印があります。土佐の極印はとても小さい!・・・これは忘れないで下さい。 
額輪
通常、額輪というとやすり目が粗く文字がつぶれたものが多いのですが、なかにはあまり額輪らしくないものも存在します。
この品の場合、側面極印が小さく土佐のものであったから判別が可能でした。
やや接郭の癖が出ています。
正字濶縁
ここに掲示した画像は、この銭種としてはほぼ最高水準に美しいものだと思います。
鋳肌も緻密に見えますが、拡大してみると会津や土佐、秋田本座写などは砂をまいたような肌・・・対してこちらは凸部より凹部の方が目立ちます。

正字
これも本座広郭を覆輪して写したものなので、書体的な特徴はありません。
銅質、製作のみが判別の基準です。
銅色は柔らかな感じのする黒味がかった赤褐色のものが多く見られます。
肌の部分は平滑ではありませんが、会津や土佐のようなきめ細かな粒子が並ぶような肌ではなくごつごつした荒れ肌か、あばた肌といった感じです。側面の極印は石持桐という独特の形状のものが多く見られます。
極印サイズも大きくなります。
やすり目は縦方向にごく弱く見られます。

仙台藩銭 長足寶(小様)
本座銭の覆輪刔輪銭ながら、巧妙にその癖を隠す工夫がされています。天字第一画を太くし、寶足をすっと伸ばしています。背郭が反り返るのは覆輪変形によるものでしょうか。しかしその最大の特徴は、魚子(ななこ)と称される独特の粒子状地肌。また、画像には現れづらいのですが面側には地肌を縦方向に鋳浚った条痕が複数観察できます。銅質はやや白銅質のものが多く、黒く変色していることが多いようです。
 
ステップ15 本座系の異制銭類。
称:秋田本座写
この手のものは昔から秋田本座写と呼ばれていて、東北地方に多く見られるそうですが、出自は定かではありません。
書体は本座そのものでざらざらした鋳肌、側面の粗いやすり目、深く打たれた極印が特徴です。
色は淡褐色のものが多いようですが赤褐色のものもあるようです。

※銭文径の縮小がほとんどなく、本座の末炉銭ではないかとの説もあるようです。
あるいは仙台藩?
称:佐渡本座写
基本的に本座広郭の書体と変わりません。やや製作が粗く、灰銀色のものをこの類に充てています。
本座の白銅質(100円玉の色)のものだとお考え下さい。色を見るには側面の色で見るのが判りやすいと思います。(グレーの色調。)

※本座の銅替りと考えても問題が無いようです。
称:岡藩銭肥天痩通
天保通寶と類似貨幣カタログでは本座銭に包括されています。やや白味の勝る色調でやすり目が粗く走ります。
本座?岡?不知広郭手?
おそらく上掲示銭と同じ出自ではないかと思います。
この類は重量配分がいいかげんで、本銭は23.5gもあります。また、同じ製作のもので19gを切るものもあり、重量計測のうるさかった本座であるとは言いきれないと私考しています。
 
ここまでで出てこなかった珍銭類

左下:反玉寶 やや真鍮質で荒れ肌 王画が反り尓と連なる
右下:薩摩小字 不知小字もほぼ同じ書体

存在を忘れてはいけませんが、まず滅多なことではあえないでしょう。
不知天保銭の見分け方

天保通寶の密鋳は、天下の大罪ですので見つかったら厳罰は免れません。一方で一文銭数枚のコストで鋳造できる天保銭は財政逼迫にあえぐ諸藩にとって魅力的な存在でした。そこで諸藩は幕府に隠れながらもその鋳造技術を尽くして天保銭の密鋳に励んだと思われます。密鋳ですから文献などの証拠は極力残していません。密鋳は民間でも行われたようで、実に様々なタイプの密鋳銭が存在しています。
銭譜では本座分類にならって 
長郭手 細郭手 中郭手 広郭手 に分類することが多いのですが、モデルが確定できないものもあります。不知銭には比較的分かりやすいものから、専門家でも判別困難なものがあります。
そこで微細な変化、違いを発見する必要があります。ポイントは・・・

(A)銅質や制作の違いを感じとる。・・・ただし、これは保存状態でかなり変化します。
(B)大きさ(長径)を比較する。本座の標準サイズは49.2㎜前後です。
(C)側面極印を見る。無極印であったり、異極印は本座以外が多い。
(D)側面のやすり目を観察。本座のやすり目と違うかどうか見る。
(E)銭文径を測る。ノギスで計測します。

※寛永銭で有効だった内径計測は覆輪、刔輪という技法があるため天保銭の場合はあまり有効ではありません。

参考値(本座銭標準値)
本座長郭:
長径49.1~3㎜ 短径32.4~5㎜ 銭文径41.5~8㎜
長郭以外:
長径49.1~3㎜ 短径32.4~5㎜ 銭文径41.2~4㎜ 
(サイズはあくまでも目安です。とくに外径はやすりがけによって変化しますので判定の当てになりません。)

なお、本座銭には絶対的な規定重量があり、
最大重量21.75g、最軽量19.5gの範囲に収まるように鋳造され、規定外は溶解処分になったようです。したがってこの重量範囲外のものはかなりの確率で藩鋳銭や不知銭があるといってよいと思います。(ただし、軽量の場合は盗銅や焼けによる目減りに注意して下さい。)
※実際には当時の計量は精密ではなく、長郭では22.2~19.2g、長郭以外は24.2g~18.9gまでのばらつきが観測されるようです。(天保銭事典より)
ただし、個人的な感覚として規格外のものの中に精巧な不知品の混入がかなりあると思います。規格外を不知と見るか否かは個人的な感覚、泉家としての考え方によってかなり異なります。
私は『ありふれた不知品・本座酷似不知品』はあるという考えですので、存在は否定しませんが過大評価もしません。一方で類似品はとりあえず本座に包括しておく・・・という考え方もあり、それはそれで考え方は否定できませんね。

平成20年5月春の古銭会において天保銭人から教えて頂いたこと。
1.本座の天保に覆輪、刔輪はない。反郭、含円郭も本座ではありえないと思う。
2.本座の天保の郭内の仕上げは背から面にかけて平やすりが入るが、郭内全体にきっちりやすりがかかることはない。
3.本座は郭内がでこぼこするような品は廃棄対象である。→そのようなものは本座外であることが多い。
4.本座は極印はきっちり、丁寧に打たれる。(上下逆はある。)極印は極印であり厳正なもの。ないのは不知品か後鋳品、変造品。
5.本座は文字の立ち上がりは台形状。文字が細く先の尖った山にはならない。
6.不知品のほとんどは藩鋳銭である。したがって銭体が縮小しない精巧なものがあるのは当然である。
7.本座は輪側面のヤスリ目は始点と終点が細く、中ふくらみの形。これはやすりの形状からこうなる。
8.製造手順は厳格だが本座の通用銭の仕上げは雑なものも多い。
 
琉球通寶の大字と中字の見分け方

大字には色々な書体があって、実際にはほとんど中字と同じ文字の大きさのものもあります。
ここにある大字狭貝寶はその典型です。
したがって見分けにはある程度の慣れも必要ですが決定的なポイントがひとつだけあります。

中字はしんにょうの横引のうねりが強く、通用の下横引の前方としんにょう横引の隙間がほとんど無い状態で(あたかも田の字のように)接します。
一方、大字はきちんと用の形を保って接してます。

用の形の長短で見分けるのがもっとも判りやすいと思いますので、是非お試し下さい。

新寛永通寶分類譜 古寛永基礎分類譜 赤錆の館
天保銭の小部屋 文久永寶の細道